自分の勉強メモを書いておきます。
ナッツの安全な導入の良い資料はないかなと(日本は離乳食にナッツ使わないので)海外の文献やサイトを探していたら、イギリスの方でいくつか導入の資料が出てきたんですが、そこでリップテスト(リップドーズテスト)というのをしている病院がいくつかありまして、どういうものかなと調べてみました。
具体的にはどんな感じかというと
・ナッツを半分に切る。ナッツの半分をリップの内側に触れさせる。10分待つ。
・極少量のナッツバターを唇の内側に塗る。
・微量の食品を内唇に塗る(外唇や表面には塗らない)→10〜15分間待機し、発赤や発疹などの症状を観察
という感じで、唇の内側の粘膜部分にごく少量のナッツを塗って反応を見る、というもののようです。しかしやり方や判定は施設によりかなりマチマチ。
まあ確かにすでに感作されていて強い反応を起こす可能性がある人であれば、その程度でも反応は出るだろうと思うんですが、実際感度や特異度等々どんなかなと思って調べたところ、こんな論文が出てきました。どうやらイギリスでよくやる手法のようでした。
https://www.jaci-inpractice.org/article/S2213-2198(19)30441-6/fulltext
こちらにフルがあるので読んでいただくとわかるのですが、要約しますと、
英国小児アレルギー学会のメンバー147名(全体の67%)を対象に、LDCの実施方法・解釈・有用性に関するオンライン調査を実施。
• 回答者の80.7%がLDCを日常診療で実施。
• LDCはOFCの「第一段階」として導入されていることが多い。
• 実施方法・解釈は施設により大きく異なる(例:内唇か外唇か、どの症状で中止するか)。
• 例えば、口のかゆみや唇の発赤が見られた場合にOFCを中止するかどうかの判断は分かれていた。
という結果でした。ナッツやピーナッツの検査に使われることが多いですが、卵、魚、牛乳、エビなどにも使うケースがあったようです。
で、実際に、
ロンドンの2つの専門施設で、IgE媒介性食物アレルギーが疑われる小児220人を対象にLDCとOFCを連続して実施(最終解析対象はOFCが確定した198人)。
• LDCはOFCの30分前に実施。食物を内唇に30秒塗布。
• LDC陽性は、唇に赤み・蕁麻疹・腫れが見られた場合、および全身症状を伴う場合と定義。
• 全例でLDC後にOFCを実施。
で、
• LDC陽性: 12人(そのうち1人は全身性の蕁麻疹を呈した)
• OFC陽性: 31人(10人がアナフィラキシー)
• LDC感度: 32%
• LDC特異度: 98%
• 陽性的中率(PPV): 83%
• 陰性的中率(NPV): 89%
• 偽陰性率: 68%
• 偽陽性率: 1.2%
という結果でした。
結論としては、
• LDCは英国の多くの施設で使用されているが、手技や解釈が統一されておらず、再現性・診断的妥当性に課題がある。
• LDCは感度が非常に低く(32%)、OFCの代替としては不適切。
• 偽陽性やまれな全身反応の報告もあり、LDCを前提とした診療フローの有用性は乏しい。
• 診断目的でのLDC使用はガイドラインで控えるべきであり、どうしても行う場合はOFCを継続することが望ましい。
• 乳児へのピーナッツ導入時など、LDCが「安全な導入法」として用いられることがあるが、現時点でそのエビデンスは乏しく、慎重な姿勢が求められる。
という感じでまとめられており、まあ感度が低いので経口負荷試験の代わりにはならないし、偽陽性も安全性も微妙なので使い所は難しそう。
今回調べた目的としての、「安全な導入法」として用いられることもあるけど、エビデンスは乏しいので微妙……
という感じですね。
詳しく見ると、偽陽性もいますし、LDCで陽性でも、OFCは最高用量じゃないと反応していなかったりと、かなり結果のばらつきがありそうで、しかも専門機関でやってそれなので、家庭でやるのはどうじゃろうなあ……という感想です。
日本でも、卵のアレルギー反応をみるのに、スプーンに白身を少しつけて(?)唇にちょんと当ててみる、みたいなやり方を勧めている人を見たことがありますが、もしかすると日本でも似たようなことを勧めている誰かがいらっしゃるのかもしれません。
最初の一口を食べさせるのが怖いなと思う方はやってみてもいいかもとは思いますが、よくわからない反応が出た時は「結果を保留して」「専門の先生に相談する」ようにすることが大事だと思います。
アレルギーの反応でない可能性もありますので、勝手に除去したりせず、必ず! 医療機関に! ご相談ください!(しつこい)
というお勉強でした。
おつきあいありがとうございました。
参考