世界で流行している麻疹の話

 

最近、世界中ではしか(麻疹)の感染者が増加しているのをご存じでしょうか。

2023年は1030万人が感染したと推定され、2024年も増加傾向。死亡例は、主に5歳未満の子どもを中心に10万人を超えたと見られています。

2024年は2023年を超える報告数となっており、2025年になってそろそろ落ち着くかと思いきや、日本でも海外からの持ち込みによる感染が増えてきていて、私自身も少し不安に感じています。特に最近は、ベトナムからの帰国後に発症する例が目立っています。

 

では、なぜこのような流行が起きているのでしょうか?

 

理由のひとつは「新型コロナウイルス」の影響です。

当時、外出が制限され、定期予防接種を予定通り受けることが難しくなったご家庭も多かったのではないでしょうか。

「行きたくても病院に行けなかった」「予定がどんどんずれ込んでしまった」そんな記憶、ありませんか?

 

これは日本だけの話ではありません。世界中で、予防接種を受け損ねた子どもたちが多くいたのです。そして今、その“すき間”を狙うように麻疹が再び広がっている状況です。

 

 

 

 「少しくらいMRワクチンの接種率が下がっても大丈夫」…ではありません

 

 

麻疹ウイルスの感染力は、インフルエンザの10倍程度と考えられています。

麻疹への免疫がない人の中に1人患者さんがいると、なんと12〜18人にうつしてしまう感染力です。

飛沫感染や接触感染以外に、空気感染をします。その感染力としては、大きい病院の待合室の端と端に座っていても、うつってしまうことがあるほどです。

 

ただ、大変ありがたいことに、麻疹はワクチンを2回接種することで防ぐことができます。

1回の接種で約95%、2回接種すれば、ほとんどの人が麻疹への免疫を獲得します。

 

感染力の強い麻疹ですが、もし麻疹に感染した人がいても、周囲の人がみんな免疫を持っていたら、うつる人がいないのでそれ以上感染が広がりません。

集団の中で90〜95%以上の人が免疫を持っていれば流行を防ぐと考えられています。これを「集団免疫」と言います。

 

なので、定期接種率を95%以上に保つことが、流行を防ぐ鍵となるのです。

 

けれど今、日本ではこの予防接種率が下がってきています。

コロナ禍以降、特に「2回目」の接種率は、地域によって90%を切っているところもあり、ちょっと心もとない状況です。

 

図 2014〜2023年の麻疹風疹ワクチン接種状況(第1期)

2023年← →2014年

コロナ禍以降、接種率の低いピンク色の地域が広がっているのがわかりますか?

 

図 2014〜2023年の麻疹風疹ワクチン接種状況(第2期)

2023年← →2014年

コロナ禍以降、90%を切る地域があることが見て取れると思います。

 

 いま、できることを。

 

麻疹の流行を防ぐ鍵、それは麻疹の免疫を持つ人を増やすこと。

まずは全く麻疹から守られていない、1歳のお子さんの第1期の接種が最優先です。

次に、年長さんの年齢で行う第2期の接種です。

 

まずは「定期接種の年齢」のお子さん、そして「受けそびれてしまった」お子さんの予防接種を確認してみてください。

 

とくにコロナ禍の前後に生まれた子(実はうちの次女もそうです)、混乱の中でMRワクチンに限らず、ほかの予防接種も抜けている可能性があります。

 

母子手帳、お手元にありますか?

よかったら、ちょっと開いてみてください。

シールやハンコが抜けているところ、ありませんか?

 

もし不安なことやわからないことがあれば、かかりつけ医に母子手帳を持って行って相談してみましょう。

「打ち忘れてた…!」となっても大丈夫。後から接種できる「キャッチアップ接種」という仕組みがあります。

 

ただし、定期接種の期間を過ぎている場合、自費になることがありますので、費用についても確認しておくと安心です。

 

実は、2025年3月現在、MRワクチンが全国的に供給が不安定で、希望しても接種が難しい状況が続いています。

定期接種の時期になりましたら、まずは予約が取れるかかかりつけ医にご相談ください。

(今年度中に接種できなかったお子さんに関しては、2年の接種期間の延長が決まりました。詳しくはこちら)

 

 

 

 ワクチンで防げる病気が、ある。

 

 

ワクチンが開発されている病気は、そもそも「命にかかわる」「後遺症が残る」「妊娠中の感染で赤ちゃんに影響がある」…そういう病気です。だからこそ、世界中の研究者たちが懸命にワクチンを開発してきたわけです。

 

いま、私たちにできるのは、小さなことかもしれません。

 

でも「母子手帳を開いてみる」

たったそれだけで、子どもの命を守れる可能性があります。

 

何か気になることがあれば、どうぞ遠慮なくかかりつけの小児科でご相談を。

一緒にお子さんの健康を守る方法を考えていきましょう。

 

 

 参考

 

https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fimmunizationdata.who.int%2Fdocs%2Flibrariesprovider21%2Fmeasles-and-rubella%2Fglobal-mr-update.pptx%3Fsfvrsn%3D3547ebab_9&wdOrigin=BROWSELINK

 

https://www.who.int/news/item/14-11-2024-measles-cases-surge-worldwide--infecting-10.3-million-people-in-2023

 

https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/331533/9789241516655-eng.pdf?sequence=1

 

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/hashika.html

 

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles/221-infectious-diseases/disease-based/ma/measles/550-measles-vac.html