こんにちは、相川晴です。
さて、今日はMRワクチンの自主回収の話をしようと思います。
武田製薬製のMR(麻しん風しん混合)ワクチンに自主回収が出ています。
詳しくはこちらを見ていただくのが正確なのですが、少しわかりにくいと思うので簡単に解説します。
なぜ自主回収?
MRワクチン(乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」)と麻疹単独ワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン「タケダ」)の中で、本来効能が認められている「有効期限」よりも早い段階で、麻疹のウイルス力価(ウイルスの量、と思ってください)がワクチンの承認規格の基準を下回る可能性があるものがあることがわかったため、自主回収が行われています。
原因は?
原因は、お薬を作る時の冷蔵庫温度が一時的に超過したことのようです。
有効性は?
今回、ウイルス力価が基準をわずかに下回っていることで回収されています。
この麻疹のウイルスに対して免疫がつくかどうか? というのが有効性の判断基準となります。
詳しい数値も 一部出ているので検討しましたが、抗体陽転率は通常の製品とほぼ変わらないと考えてよいかと思います(もちろん個人差もありますし、絶対とは言えませんが……)。元々の基準がかなり厳しいので、幸いといったところでしょうか。
具体的に言うと、WHOが麻疹ワクチンの最低力価として示しているのが1000 感染単位(FFU) (3.0log10FFU/0.5mLに相当)になります。
今回のMRワクチンの基準は3.7 log10 FFU/0.5mL だったのが、モニタリングで最も低い値が3.6log10 FFU/0.5mL でした(ロット Y303 の 10 ヵ月時点。なお、6 ヵ月時点は 3.7 log10 FFU/0.5mL)。
臨床試験では
ウイルス力価 平均 HI 抗体価(log2) 抗体陽転率
3.9 log10 FFU/0.5 mL 5.3 100%
3.0 log10 FFU/0.5 mL 5.3 100%
1.9 log10 FFU/0.5 mL 4.6 91.7%
となっています。ですので、もし仮に3.6log10 FFU/0.5mLであっても、WHOの基準は満たしていますし、臨床試験から考えますと通常の製品と同等の効果が得られるだろう、ということになります。(数値等につきましては下記資料中のものから引用しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/001191535.pdf
安全性は?
タケダの安全性データベースで全例検討されたようですが、現在特に安全性に懸念はないとのことです。
品質は?
出荷前の品質試験結果は適合している&麻疹のウイルス力価以外の点は問題ないとのことです。
対象になるのは?
タケダのサイトから画像引用させてもらいます。
自主回収になっているのが上側の表です。
接種された人がチェックするのは下側の表になります。その「承認規格を下回る可能性を否定できない期間」に当該ロットを接種された方のみが対象と考えてください。
母子手帳にシールが貼られていると思いますので、ロット番号はそこで確認できます。
・2023年12月14日以降にMRワクチン接種+ロット番号がY302
・2023年8月26日以降にMRワクチン接種+ロット番号がY303
それ以外の人は今回の件は気にしなくてOKということになります。
回収ロットであったとしても、接種時点では麻疹のウイルス力価は基準以上と考えられるので、回収対象ではないロットのワクチンを接種したのと変わりはない、ということですね。
また、対象の方であっても、上記の通りおそらく問題はないかと思われます。
ただ、不安に思われるのは当然と思います。
今後については、
・本当にちゃんと抗体ができているか抗体価の検査をする
・抗体価が足りていないならば、追加接種をする
といったことが検討されますが、対応については2024年3月ごろ武田製薬が詳細を案内する、とのことですので続報を待たれるとよいかと思います。
個別の事案につきましては、接種した病院に相談するか、下記の武田製薬の案内に従ってお問い合わせください。
また、自主回収に伴い出荷調整も行われる予定です。定期接種の時期(1歳、年長の4月から翌3月まで)が来ましたら、お早めに予約をされるとよいかと思われます(接種したい時にワクチンが確保できない可能性がありますので、早め早めにどうぞ)
参考
https://www.mhlw.go.jp/content/001191535.pdf