ハングマンズ・ノット（2018）

近頃の言葉でいえば、“コミュ障”と呼ばれる若者と、欲望のためなら殺人も厭わないヤンキー兄弟の殺し合い。

これでもかというくらい、残虐な殺人場面が繰り返される本作。

ニコ動と思われるネット配信内で行われるヤンキー兄弟とその仲間による暴力殺戮場面は、なかなか今風の感覚もあり快調だった。

が、その後に繰り返される暴力場面は工夫のない場面で退屈する。

グロ耐性が低い人には要注意な場面が続く。

無軌道な若者たちの暴力を描いた作品と言えば、キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』が代表作と言えると思うのですが、阪元裕吾監督による本作には、そういうエスプリ要素が全くない。

それはそれでいいと思う方もおられる方もいるとは思いますが、私には安易な刺激を売り物にした程度の低い作品と感じざるを得なかった。

本作は、よく園子温監督のバイオレンス作品と比較されることもあるようですが、園作品には、そのバイオレンス描写の中に『詩』を感じ取ることができた。

が、本作にはそんなものは全くない。

ただ、少し面白いところもあって、

京都タワーに、まるで9.11テロの再現のような場面があったり、3.11東日本大震災のボランティア活動を皮肉ったりした場面には、少しニヤリとしてしまった。

この路線で、徹底的に社会を皮肉ったバイオレンスホラーに味付けしていたら、映像表現は上手いのだから、あるいは記憶に残る一編になったかもしれない。

少年法を痛烈に批判したような、イラストでのエンドクレジットの処理などにはセンスを感じることができるのだから。

これからに期待かな。

『ハングマンス・ノット』（2018）

坂本裕吾監督　87分

2018年（平成30年）8月公開