最前線物語 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 最前線物語(1980)

 

戦勝国のお国自慢映画でもなく、反戦映画でもなく、戦場後遺症映画でもない独特な余韻を残す、サミュエル・フラー監督作品。

 

第一次世界大戦で、フランスの戦地で戦っていた新兵(リー・マーヴィン)は、戦争終結の知らせを聞いていなかったために、戦争は終わったと投降してきたドイツ兵を刺殺。

 

時は流れ、第二次世界大戦となり、その新兵は古参兵となり部下を率いる立場になり、あらゆる戦地に赴くのだが・・・

 

北アフリカ、シチリア、ノルマンディ、ベルギーと戦地を転々としながら、戦場ならではの悲劇が当たり前の日常のように起こる。

平和を偽装するために女性たちに農作業をさせて、陰から襲撃を伺おうとする場面や、そんな戦地でも新しい生命が生まれそうになり、男だらけの兵隊たちが妊婦の出産に携わる場面など、悲劇と喜劇が表裏一体となり物語が展開する。

ナチスから迫害を受けていたであろう少年が、兵士の背中の上で静かに死んでしまう場面なども、演出の仕方によっては強い反戦メッセージになりうるし、人殺しは嫌いだと言っていた穏やかな青年兵士のマーク・ハミルが、無抵抗の敵兵に対し弾薬が尽きるまで銃を撃ち続けるシーンは、戦争の狂気を象徴的に描き上げることもできそうなのだが、監督サミュエル・フラーは、そこになんの感情を込めることもなく平然と描き続ける。

こんな感覚で描かれた戦争映画は他にはない。

 

ラストだけはちょっとだけ気取っているが、おそらく予算もそんなにかかっていないであろう本作。

異色の戦争映画と呼べると思う。

 

『最前線物語』The Big Red One(1980)

サミュエル・フラー監督 113分

1981年(昭和56年)1月日本公開