ポリス・ストーリー/香港国際警察(1986)
ジャッキー・チェンが、端役でなく、堂々主演で日本のスクリーンに登場したのは、1979年の『ドランクモンキー/酔拳』でした。
ブルース・リー作品のような猛烈クンフー作品が観客に飽きられて、様々な香港製亜流作品が公開されては興行的に失敗する中、『酔拳』はそれらの作品とは一線を画し、完璧な振り付けにコメディ要素を絡めたユーモラスな作風で、多くの地方では2本立て興業の1本だったにもかかわらずスマッシュヒットになりました。
同時に、主演のジャッキー・チェンが、そのやわらかい風貌も相まって、大人気に。
そして、そのユーモラスなキャラクターを活かした小品に何本か主演した後、自ら監督して大ヒットしたのが、『プロジェクトA』。
映画的演出もぐっと上手くなり、さらにスタントなしのアクション俳優としての評価が高まった後、再び彼が演出し、満を持して発表したのが本作です。
麻薬取引の現場で悪玉を逮捕するオープニングの大活劇シーンの後、ジャッキーは、悪玉のボスを起訴するために証人となる悪玉の秘書をしている美女のボディー・ガードを命じられる。
秘書を殺しにやってくる殺し屋や、同僚刑事の裏切りなどがあり、秘書には逃げられ、自らは左遷されたりと散々苦労するジャッキーだったが・・・
悪玉たちの悪さが、いちいち回りくどいのが少し難点なのだが、ジャッキーの生身のアクションにはそんなことも吹き飛ばしてくれるくらい爽快で、そして凄まじい。
カメラや演出もなかなか頑張っており、冒頭のカーチェイスシーンなどは、007シリーズも顔負けだ。
広角に引いたカメラで、民家を壊しながら山を下りていく様などとても迫力があるいいシーン。
田舎の警察署に回されたジャッキーが、次々とかかってくる電話に振り回されるシーンも楽しいし、アメリカ映画十八番の法廷シーンまで出てくる。
クライマックスは、敵味方入り乱れてのデパートでの大乱闘。
ヒロインも相当なスタントシーンを見せるところがすごい。
ジャッキーはもちろん、やられ役の悪漢たちも圧巻のスタントで、ハラハラ心配になるほど。
この感覚は、ワイヤーアクションやCGでは絶対に味わうことのできない本当に贅沢なシーンだ。
前述の『プロジェクトA』では、ロイド喜劇の再現を試みたように、本作でもアメリカ映画をとてもよく研究して作品に生かしているのがよくわかる。
ジャッキー映画の定番となったエンドロールでのNG集で、スタントの失敗シーンなども流れますが、それを観ると、本当に命がけだったんだなあと思います。
『香港国際警察/ポリス・ストーリー』(1985)原題:警察故事、英題:Police Story
ジャッキー・チェン監督 105分
1985年(昭和60年)12月日本公開