【お家でリバイバル】
ジャスティス(1979)
ほぼ44年ぶりに再見しました。
多分、初見の時より面白かった・・・と思う。
そして、初見の時のレビューはわかったようなことを書いていたなと恥ずかしくもなりました。
アル・パチーノ演じる熱血弁護士アーサーは、
正義感の塊。
そして、情に厚い部分も持ち合わせており、法規で固まって血の通わない判決を下す判事を殴りつけたりするほど。
そのアーサーが殴りつけた判事が、強姦の罪で逮捕され、その判事は、自身の弁護になんとアーサーを指名するのだが・・・
法曹関係の人間にはまともな奴はいないなあと感じさせる本作。
フィクションではあるのだが、末恐ろしいものを感じさせてしまうノーマン・ジュイスン監督の演出には切れがある。
法廷ものなので、セリフのやりとりなど冷たい感じのする設定になりがちだが、育ててくれた祖父(なんと、リー・ストラスバーグとゴッドファーザーPART2以来の共演)が次第に認知症になっていく描写などを加えて、アーサーの性格に温かみを持たせている。
クライマックスでは、『セルピコ』で演じた正義感の刑事のように、本作でも彼の正義感が爆発する。
法廷ものを作らせたら、アメリカ映画はやはりうまいなあと改めて感じました。
観客も心を揺さぶられます。
怒りに震えながら絶叫するアーサー。
その瞳には涙が浮かんでいる。
なんて上手いんだ、アル・パチーノ。
罪人を弁護することで気を病んでしまった弁護士や、自殺願望のある判事など、こんな人物が人を裁く仕事に就いて大丈夫なのと思わせるほど、キャラクターはデフォルメされているが、時に分かりにくいことのある法廷ものの対立構図はわかりやすかった。
初見のときと、明らかに印象が変わったのは、
その時は重要に思わなかった認知症になるリー・ストラスバーグの演技が、実は重要だったと気づいたこと。
認知症の進行の描写が自然だったことが主因だと思う。
私の母親も、私の顔を忘れてしまうくらい認知症が進んでいるから・・・
ここで、ぐっと主人公アーサーに感情移入できました。
感情を爆発させたあとの、アル・パチーノの呆けた表情は、ダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスが結婚式場を抜け出してバスに乗り込んだ時の不安げな表情に似ているなと思いました。
こういうところも、再見による新発見。
こういう楽しみ方ができる配信サービスって、ありがたいですね。
あと、もう一言。
邦題の『ジャスティス』はシンプルでいいのですが、ここは現代の『...And Justice for all』を直訳して、『そしてすべての者に正義を』としたほうが、作品のテーマがより観客に伝わったのではないかなと思います。
『ジャスティス』...And Justice for all(1979)米
ノーマン・ジュイスン監督 119分
1980年(昭和55年)3月日本公開