さらばダチ公(1974)
私の大好物である70年代テイストが満載な作品。
3年の刑期を終えて出所してきた、猛夫(松田優作)は、家に戻っても家族からのけ者扱い。
しかし、そんな猛夫にも、出所を祝ってくれる3人の友達がいた。
しかし、その3人もいつも金欠でしょぼくれている。
そんな猛夫たちの前に、ダム建設で立ち退きを迫られている家の娘、シン子(加藤小夜子)が現れ、猛夫達3人は行政や業者を相手に多額の立ち退き料をせしめようとダム予定地の小屋に移り住むのだが・・・
惜しい。
社会派風刺コメディとして、もっと面白くなる題材だ。
ギャグの空回り感が痛々しくて辛くなる。
男4人と女1人の共同生活。
親からの相続対策として、猛夫とシン子が形式結婚をして、小屋の中でイチャイチャするのですが、あの状況で平気な精神状態でいられる健全男子などおりません。
案の定、その色恋沙汰が原因で立ち退き料奪取計画がほころび始めるのですが、もう少しスマートに描けなかったかな。
猛夫を演じる松田優作のコメディ演技が案外良かったので尚更惜しい。
お色気シーンも過剰ですね。
やっぱりそういうシーンがないとお客さんが入らない時代だったのでしょうか。
浅間山荘事件がモデルになったであろうクライマックスシーンも肩透かし。
お金を食べるっていうアイディアはメチャクチャいいので、もう少し脚本に工夫がほしい。
猛夫のダチの一人、脳みその99%が性欲の梅を演じる、佐藤我次郎が怪演。
『政治』を『性治』とはき違えて行動する様には、当時の政治を皮肉る感があって少し面白いが。
出所した猛夫が、がむしゃらにパンにかぶりつくシーンは同時期にテレビで放映されていた『傷だらけの天使』に影響されているか。
ダチ公たちに刑務所内の生活を聞かれた猛夫が、健さんの『網走番外地』に例えたところ、『今は〇〇三代目』(山口組三代目(1973)をさしていますね)などの実録の時代だぜって突っ込まれるところは、東映映画へのエールにもディスりにも見える。どっちだ?
そんなあ!と脱力感さえ覚えるエンディング。
人を喰ったといえばそうなんだけどね。
『俺たちに明日はない』(1967)
とか『明日に向かって撃て』(1969)
とか『イージー・ライダー』(1969)
のような壮絶なシーンを予想していたんですけど・・・
時代はしらけ世代にまっしぐらだったんですかね。
小悪魔的魅力の加藤小夜子は光ってました!
こういうタイプの女性の魅力を引き出すのは、うまいですね、澤田幸弘監督。
後年の『高校大パニック』(1978)の浅野温子さんに通じるものを感じます。
オープニングに当時の浦安駅が映ります。