約束(1972)
映画のスチルカメラマン出身で、その映像美が“日本のクロード・ルルーシュ”と称された斎藤耕一監督の出世作となったメロドラマです。
主演の二人には、映画本格初主演となった、ショーケンこと萩原健一と松竹の看板女優、岸恵子が演じています。
冬の北国へ向かう列車で偶然出会う影が漂う女と、軽薄な感じのする若者。
女の隣には、彼女を監視するような人物が常についていた。
男はそんなことは気にせずに女に語り掛けるが、女は口を開かない。
男は列車の僅かな停車時間を利用して駅弁を買ってきて、二人に食べるように勧める。
「いただくわ、あなた」
「口をきいたな、あんた」
二人は初めて言葉を交わす。
見えない糸に導かれるように惹かれあう二人だったが・・・
感情過多と思えるくらいにおセンチに物語は展開します。
二人がなぜ北国行きの列車に乗り込んでいたのかというのも、物語が進むにしたがって明らかになっていくのですが、そこに驚くような理由はありません。
その間の蛍子(岸恵子)と朗(萩原健一)の心の揺らめきは静かに盛り上がります。
ひなびた海岸沿いの村の風景がそんなセンチな気分を盛り上げます。
このあたりがさすが、スチルカメラマン出身の斎藤監督で、
移動する列車の空撮や、列車内の二人など、完璧な構図が本作の生命線になっていると思います。
ラスト近くに映される屋台のラーメンも、めちゃくちゃ美味しそうです。
演出としては、公園で何かに悩む蛍子がうつむいた瞬間に列車がトンネルに入るシーンが繋がるところに主人公の不安が集約されているようで見事だと思いました。
これがラストシーンの大きな伏線になっています。
列車を降りた瞬間にちらつき始める雪のタイミングは奇跡的と思えるほど完璧。
ショーケン演じる朗が少々女々しくて、感情移入が難しくなってしまったのが残念。
絶望する青年として好演なのですが・・・
岸恵子はとても美しく魅力的です。
『約束』(1972)
斎藤 耕一監督作品 88分
1972年(昭和47年)3月公開
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