ロッキーの報酬 Rocky's Reward | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 ロッキーの報酬 Rocky's Reward

 

手を変え品を変え未だに制作され続けるロッキー(関連)シリーズ。

 

私が大好きなのはやっぱり第一作。

冬の夜明け前。

凍てつくようなフィラデルフィアの街をロッキーがランニングをしているときに流れる、

印象的なファンファーレの、『ロッキーのテーマ』(Gonna fly Now)が特に有名です。

 

でも、ビル・コンティが手掛けたこのサウンド・トラック・ミュージックの中で私がそれよりも好きなのが、エンド・クレジットに流れる『ロッキーの報酬』( Rocky's Reward)です。

 

バロック調の音楽がまるでヴィヴァルディを思わせるような旋律。

この作品の持っているテーマ、すなわち『ロッキーの報酬』とは何だったのかというのを見事に表した名曲です。

 

 

思えば、最近のロッキー(関連)シリーズに欠けているのはこの情感なんですよね。

不器用な男女の下町純情物語。

その背景にボクシングがあった。

それだけ。

 

確かにファイトシーンは迫力があり、トレーニングシーンも興奮するけど、私はそこに共感したのではない。

つつましく都会で暮らす若者の市井描写に感動を覚えたのだ。

 

スタローンの実弟がストリートミュージシャンとして歌う『Take You Back』のシーンも良かったですよね。

仲間たちと夜中に歌っているんですけど、

なんとも温かみがあっていい。

 

 

思えば第3作目あたりから潮目が変わってきたように思う。

ファイトシーンに興奮した観客を意識して作品を作り出した。

 

主人公は鍛え上げた肉体を強調するように。

 

そして、

作り手は観客の期待に応えるためにより刺激的な展開にしなくてはならなくなり、次々と主要人物を殺していくようになる。

ファイトシーンはよりスローモーションを多用し尺たっぷりに筋肉のぶつかり合いを見せる。

 

その展開、

確かに感情は高ぶるでしょう。

しかし、私が本(関連)シリーズに求めるのはそこではないのです。

カッコいいロッキーや主人公が見たいわけではないのです。

 

次々と作られていった続編の中でわずかに共感できたのは『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)かな。

これで本当に終わってくれたらよかったのにと思っています。

 

 

 

一作目、

派手じゃないけど、ロッキーとエイドリアンのスケート場での初デートの場面なんかめちゃくちゃいいですよね。

その後、狭いロッキーの部屋でエイドリアンは初めて眼鏡を外すのです。

バックで流れていた曲がこれ。

ムーディーでとてもいい。

 

文盲のロッキーが高利貸の仲間に馬鹿にされるシーン。親分に債務者の指を折れと言われているのにそれができないシーン。エイドリアンから大型犬バッカスをプレゼントされるシーン。

トレーナーを申し出てきたミッキーを最初は追い出しながらも、結局は受け入れるシーン。

テレビの向こうからおどけてエイドリアンにロッキーが語り合うシーン。義兄のポーリーと喧嘩しては仲直りするシーンetc...

こんな細かい描写に共感し感動したのです。

 

好きだった優しい『ロッキー』の世界はどんどん遠くなっていきます・・・

 

以降のシリーズが駄作だという訳ではなく、深みがなくなったと言いたいのですが。

 

今宵、久しぶりに1976年のロッキー・バルボアのいたフィラデルフィアを偲びながら観てみようかな。