『ゴジラ対ヘドラ』~幼いころの映画館の思い出 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

私の物心ついたころの最初の映画館の思い出。

『東映まんが祭り』だったか『東宝チャンピオン祭り』だったか。

 

郊外の二番館劇場だったので、

たばこのにおいが沁みついていたのを覚えている。

 

その時に観た作品はほとんど忘れてしまっているけれども、

ただ1本だけ強烈に覚えている作品があった。

 

その作品が、

『ゴジラ対ヘドラ』です。

これはトラウマ級の印象が残りましたね。

子供が主役級にキャスティングされていたりして、

子供向けを装っているのだけれど、

作者の狙いははるかに年齢層のターゲットを上に置いていたに違いない。

 

シリーズ中最も醜悪でグロテスクな敵役『ヘドラ』の造形。

サイケデリックを意識したような画面処理や音楽。

公害に対する社会的メッセージ。

 

たばこの臭いの沁みついた椅子とよどんだ空気。

『ゴジラ対へドラ』を思い出すとあの風景がフラッシュバックします。

 

過去のレビューで、

この作品が私のゴジラデビュー作と書きましたが、

『ゴジラ・エビラ・モスラ南海の大決闘』(1966)や『怪獣島の決戦ゴジラの息子』、

『怪獣総進撃』なんかを観てましたね。

 

でもこれらの作品のストーリーとかはほとんど忘れています。

それとは対照的に『ゴジラ対へドラ』の印象の強烈なことと言ったら凄いです。

 

シリーズが進んでいくごとに、

ゴジラが人類を守る正義のヒーローとなっていったのですが、

この作品はその善(ゴジラ)対悪(ヘドラ)という図式が単純に成り立っていないのが面白い。

ハッピーエンドじゃないのも異色なところ。

主題歌が、

『返せ!太陽を』ですからね。

それだけでもメッセージが伝わります。

 

人間の皮膚が焼けただれたり、白骨化したり、

単純明快なゴジラ映画を期待していた子供たちは、

私と同じようにトラウマに近い思いを持ったものでしょう。

 

この作品を監督した坂野義光もこの作品に思いいれが深かったと伺われ、

同監督による続編のプロットも存在するという。

 

この坂野義光監督。

黒澤明監督の『蜘蛛巣城』や『隠し砦の三悪人』、

古澤憲吾監督の『ニッポン無責任時代』などの助監督を務めていた優秀な人です。

 

先日、本作再見しました。

今でも十分通用する内容でした。

面白い!