ひかりごけ | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

ひかりごけ

1992年(日) 熊井啓監督作品

 

戦時中に実際に起こった食人事件をもとに描かれた武田泰淳の同名小説の映画化で、

極限状態におかれた人間の真理と道徳を問う。

 

第2次大戦下、

軍備を積んだ船が、

真冬の北海道羅臼で座礁する。

 

食料はなく、

流氷に阻まれて脱出することもできない状況の中、

4人の船員は洞窟の中で寒さをしのぐ。

 

しかし、

徐々に船員たちは体力を消耗していき、

遂に、

一人若い船員が死んだ。

 

船長三國連太郎と、

船員奥田瑛二は、その船員を食す。

 

ただ一人食さなかった田中邦衛も、

体力が尽き死亡。

 

その肉も食されることになったのだが、

奥田瑛二は罪の意識に苛まれる。

 

その奥田瑛二も死に、

三國連太郎はその肉を食して生き延びた。

 

数か月後、

奇跡の生還を果たした三國連太郎だったが、

食人疑惑が持ち上がり裁判を受けることになり・・・

 

あなたはこの船長を罪に問うことができますか?

という思い問いかけを観客に投げ出したまま物語は終わります。

それはあまりにも重たいです。

 

裁判で三國連太郎は言います。

 

『検事さんに裁かれても裁かれた気がしないんです。

あなたは人肉を食べたことがありますか?

食べられたことがありますか?

私が食した3人にだけ、

私を裁くことができると思うのです』

 

生き残るために人肉を食す行為。

道徳的には決して許されることではないでしょう。

極限状態でも道徳を守る動物こそ人間と言われると思うのですが、

それではこの船長は人間ではないのか?

そういう真理の問いかけがこの作品にはあると思います。

 

そういう哲学的なメッセージのある作品ですが、

思いのほかホラーな展開をみせますので、

閲覧注意かもしれません・・・

 

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