毎年肌寒くなり夢に見る君は規定外色のマフラーを巻いていて

「昔お母さんにもらったの」そう言って傷が滲んでも笑っていた


街路並木に沿って二人は歩いていた 話題はゲームのYouTubeだった

君の子供っぽく吐く息は白でもう少し一緒にいたいとせがんだんだ


遠い冬の陽射しに届くまでどれくらい愛し合い手を伸ばせばいいの

一体あとどれほど二人の間 孤独を育ててしまうの


だからあの時僕は死のうと思ったもう二度とこんな綺麗な日に

帰れないと気付いていたから「切なさで消えてしまう生き物なの」


春を試したくて雪解けを待つ 君は寝る前に半袖を着て

「まるでお父さんみたいに抱いて」そう言っていつも僕を困らせた


今年初めての雪に見惚れて静かにはしゃいでた君はどこへ行ったの

とても心地良い黙りも 気まずさになってしまうの


それでも君と息をしたいからまだ思い出すだけで幸せな記憶を

抱えて前を向いて歩けるさ「温もりを分かって生きていけるだろ」


何でもいいんだ でも誰でもいい訳じゃなかった


だからあの時僕は死のうと思ったもう二度とこんな綺麗な日に

帰れないと気付いていたから「切なさで消えてしまう生き物なの」


それでも君と息をしたいからまだ思い出すだけで幸せな記憶を

抱えて前を向いて歩けるさ「温もりを分かって生きていけるだろ」

蒸し暑くて寝付けないような日々が続く。昨日は40分ほどしか寝れていない。煙草を吸うとクラっと来る。シャワー浴びて誤魔化す。誤魔化す、という単語が出てくるのに時間が掛かった。僕はそんな簡単な日本語すら忘却していたことになる。こんなに恐ろしいことがあるだろうか?両親の顔、恋人(配偶者)の顔、友達の顔、恩師の顔。それらも時間は忘れさせる。何か事象を忘却したのであれば思い出せるように写真を見たり会いに行けば良いが、もし感覚すら忘却してしまったら?僕はさっき某SSWの新譜がリリースされた喜びを物の数分で忘却してしまい何故かそれは戻らないのだ。曲を聴くと気持ち良いしエモいのだが待ち焦がれてやっと聴けるようになったという感情がもう僕の中には無い。そう言えばいつからか昔両親に挨拶まで済ませ幸せになろうと約束していた彼女の性格を写したような頬や髪の繊細さも両親の凝り固まった肩を揉んだ時の苦労を掛けてきたから親孝行をしなければという感覚も親友だったAとケンカ別れしてやるせない気持ちで迎えた何か足りないけど過ごしやすかった秋のヒリヒリした感覚とか小学校の時の担任に感じていた親しみと畏怖の念が混じり合った感覚などこの文章を書きながら思い出すまで完全に忘却していた。このブログを書いている時の高揚感すら忘れてしまうのならあんまり大事に持っておかないことにしようと思った。 BGM いいんですか? - RADWIMPS



小学三年の時、夏休みの自由研究に父親にアニメ制作のスクールに連れて行かれた。アニメとは言っても所謂アニメーションではなくストップモーションと呼ばれる粘土細工を少しずつ動かしては撮影し、それを繰り返すという形式のものだ。子供の頃の僕は羊のショーンというアニメが何故かとても恐ろしくてその手のアニメーションは苦手でどちらかというとワンピースなど2Dのアニメが好きだったのだが。後で聞いた話だけど僕が休み時間に友達と自由帳にポケモンばかり描いているというのを心配半分、期待半分に感じていたらしくその才能というかエネルギーを発散させないといけないと思ったらしい。そのアニメのストーリーだがうっすらと覚えている範囲で書くと、ピー助という鳥(ビジュアルは子供がよく描くクチバシ、丸い頭、羽、足で構成される鳥)が寝坊をしてしまい最終的に学校に遅刻しないようにジェット機に変身して学校に時間通り着いたね、良かったね。という物語だった。恐らくその頃から僕は遅刻ばかりしていたのだろう。ちなみにピー助という名前はドラえもんの恐竜の映画から来ていると思われる。あと当時鳥が大好きで図鑑でよく鳥を調べていた覚えがある。デュエルマスターズというカードゲームでもファイヤーバードという鳥の種族のキャラばかり使っていた。最近空を飛ぶ夢をよく見るんだけど鳥になりたいのかなあ。 BGM MISS WORLD - ART-SCHOOL

 

数年前の夏休み、僕は美術予備校の夏季講習に参加していた。デッサンもままならなかった僕はまず丸を描くことからやらされたのだが最初の一週間のうちからやらかしてしまった。徹夜で"水彩の惑星"という小説を書いていたため、退屈な静物画デッサンの途中で居眠りしてしまったのだ。すぐさま塾長に個室に呼び出されて説教されるかと思いきやそんな事はなくやんわりと「君はどんな人なの?」ということを聞かれた。塾長はなんでも受験戦争時代の真っ只中で多摩美に入った人間でありペインターとして何年も作品を作り続けたが才能は実らず後進の育成に励むことにしたのだとか。僕はその質問に答えられなかった。僕の当時やっていたことと言えば大きめのスケッチブックにキャラクターの設定や立ち絵を描いて妄想に耽っていただけだった。それを塾長に見せると「漫画を描いてみたら?」と言われた。それから僕は一夏掛けて元々描いていた小説を漫画にする作業を始めた。それはとても稚拙で下らなく取るに足らない駄作だったのだが、それを持って上京し僕は東京の専門学校の入学資格を得ることが出来た。何がやりたいのか?それらまだ分からない。だから唯々出来ることをやっている。とりあえず文章を書く事はできる。それだけだ。

 

夕方、僕はうとうとしていた。遠くで誰かが笑う。街中で暮らしていると大学生くらいの若い大きな笑い声が聞こえて来たりする事はしょっちゅうある。それが僕の耳に入る時の音量が何dbなのか分からないが隣人の悲鳴などよりよっぽど胸を締め付ける。それは恐らく僕にとってああいう風に道端で友人達と笑い合った経験があまり良い思い出ではないからなのだろう。僕の人生はあまり良いものではなかった。まだ四半世紀にも満たない時間であるのだが...。憂鬱なことを考えたとたんに視界がだんだん暗くなっていく。不快な音が近づいては遠ざかる。なんだか手が思うように動かない。不思議な感覚。苦しい。息が詰まる...。ハッとして目を覚ますと聴こえてくるのは換気扇の音。クーラーの音。付けっぱなしのNetflixで喋っている海外ドラマのセリフ。視界に入ってきたのは夕刻を跨いでまだ電気のついていない薄暗い部屋。どうやら不思議な夢の原因はどこからか迷い込んだ蚊が僕の指から血を喰らって痒かったかららしい。今年初めて蚊に喰われた。実家だったら薬箱からムヒを取ってくるのに。幼い頃、実家の隣の家から聴こえてくるピアノの音が心地良かったことを思い出す。たまに音がズレてリズムが外れて。二度と聴く機会は無いだろう。ショパンが好きなあの子にまた会いたいと思った。BGM Made my day - 唾奇