- 大好きな久我先生のお笑い芸人ものの続編です。
- 前作は「月も星もない」。簡単な作品説明は↓
- http://ameblo.jp/hal-405/entry-10040877625.html
未読の方はそちらからどうぞ~。すごく面白い作品ですよ。
今回は主に新刊の感想を書きますので、前作のネタばれが含まれてしまいます。ご注意ください~。
全漫優勝後、お笑いコンビとしても恋人としても充実した日々を送る
温(はる)と秀永。今や破竹の勢いの「パイロットランプ」だが、トーク
メインの仕事ばかりが増え、ネタやコントのできない現状に焦りを
覚え始めていた。
そんな矢先、二人はお笑いブームの終焉を予感させる出来事を
体験する。
これまでは仕事のストレスを激しいセックスで解消してきた二人。
だが方針が合わず、すれ違い始め……?
↑背表紙あらすじより↑
前作、感動的な全漫優勝でお話を締めくくり、彼らの未来は前途洋々かと思われましたが、待ち受けていたのはお笑いブームの終焉という、彼らにはどうしようもできない世の中の流れでした。
ただ、温と秀永は「まわし」の上手さ――トーク番組で相手の話をうまく引き出して盛り上げる能力があり、またそこそこ華もあるということで、仕事は増えるばかりです。
けれど、一番したいコントがなかなかできないという、タレントよりも芸人として生きていきたい二人には辛い状況になってしまい……。
大好きな相方であり、恋人である二人の関係も、仕事に対する考え方の違いからギクシャクしていきます。恋人と相方を両立するのは苦しい。
「相方として唯一無二。ならば恋心は捨てられる?」(帯より)
二人の葛藤が描かれています。
売れるだけが目標じゃない、芸人として一番大切なことを守ろうとする二人の姿が描かれています。
さて、以下ネタばれを含む感想です。未読の方、お気をつけくださいませ。
私、久我先生の作品を全作読んでいるわけではないのですが、この作品、今まで読んだ作品とちょっと違いますね。
久我先生のキャラたちは一途で、お相手一筋!な人ばかりでした。
今作は温と秀永それぞれに想いを寄せる人物が現れ、彼らの関係を揺るがせます。こういう展開は珍しいです。
これ、二人が仕事面で順調ならこういう事態にならなかったのですが、仕事に対する考え方の食い違いから二人でいることが辛くなってきたところだったのがミソですね。
恋人との関係がギクシャク→他の人といる方が楽しい……こういう展開で心変わりする人っているよなぁ。
そういう恋人同士の危機を描くとともに、仕事も一緒の恋人同士の辛さが描かれています。
仕事のストレスを恋人と過ごすことで解消する、それが普通の恋人同士の関係ですが、恋人が相方だとそれが上手くできなくなるときがある。恋人でいること相方でいることを完全に切り離すことができなくなってしまうんですよね。
このことは「何でやねん!」でも優勝が相川に指摘した点です。
その時が「パイロットランプ」にも訪れました。
ああ、お笑い芸人としてのつながりだけでなく、こういう問題でも繋がっていたんですね。
辛いとき、思わず楽な方に逃げてしまう人の弱さ。
そういう綺麗事ばかりでない世界が描かれています。リアルだなぁ。
ハッピーなことばかりおきる作品も大好きですが、こういう人の弱さを、辛さを描いた作品も考えさせられることが多くて好きです。
……私、弱虫(人が傷ついたりする作品は辛くなってしまうのです)なので、こういう作品はドキドキ・恐る恐る読み進めるのですが。たまには結末から読んでみたり。
今作も所々で顔を歪めながら読み進めました。敏感すぎるのでしょうか?
そんな辛い立場に立った二人に理解されるという大きなパワーを与えたのが「バンデージ」の二人。
いや、行動を起こしたのは相川ですが。
まあ、こういう役目は相川の役目ですよね。
相変わらず男前~。ステキ~。
相川たちが二人の関係に理解を示し、話を聞いてもらうことが、東京に出てきて二人の関係を知る味方(というか、相談できる人)がいなかった温にとってどれだけの励ましとなったのことか。
どんな人にも弱さがあって、苦しいことがあって。そんな時に必要なのは自分の頑張りだけでなく、見守ってくれている人がいることなのではないかな、と。
相川には土屋がいて優勝がいて、丸中がいた。辛かった時に支え合ったり助けてくれた人たちがいた。
だからこそ、相川は温を家に呼んで話をしたんですね。彼らの苦しみを理解できる自分が彼らの助けになりたいと。自分の中でだけでいろいろと考え過ぎて、大切なものを見失いかけた自分を救ってくれた優勝の存在を思い出して。
……男前だなぁ。素敵な先輩だなぁ。
相川のステキさを改めて感じたシーンでした。
あと気になったのは、大阪でのライブが終わった後の秀永の行動です。
温から逃げだし、休憩スペースで泣くところ。
この秀永の心の動きは何だったのか、しばらく考えこみました。
自分がひどいことをして、別れを切り出された。
自分の行動と二人でいることの辛さを考えると、「うん」とは言えないけど受け入れ逃げるしかなかった。
けれど、別れた後、頭に浮かぶのは温のことばかりで、別れたことを後悔。
しかし、温は相川と話した後、ライブのことに夢中で、秀永は温は自分とのことをふっ切ったと感じたのかも。自分たちの環境の変化を受け入れられなかった自分とは違い、温は環境に適応できるタイプのようだし。温に優しくしてくれる百瀬という存在もいるし。
ライブ前、小関も秀永だけに憔悴を見た→温は平気に見える→秀永にもそう見え、温はもう相方としてだけの関係で歩むことにを受け入れたのだと思ったんでしょうね。
おまけに、ライブ中、自分に微笑みかけてくるし。
コントの人物設定でそうなったとはいえ、恋人と相方とを区別する小道具であるメガネをしていない=もう恋人と相方と分ける必要はない。
そして、恋人兼相方として作り上げてきたコントより良いコントもできた。
その成功に秀永に笑いかけてきて、「やったな」と言う温。
変化を受け入れられず、変われない自分とは違い、確実に前に進んでいる温。
ライブ前に父の手紙を読んで様子が少しおかしかった温を心配したけれど、温はそれを自分の中でおさめ、自分を別に必要としていないし。
自分の弱さを改めて感じ、もう温とは恋人として戻れないと感じたのでしょうね。
で、動揺して温から逃げだした、と。
まあ、温とやり直したいと思っても、ひどいことした自分にはその権利もないと思っていたのかも。
と、秀永の行動をぐちぐちと考えこんでいました。書いたことでまとまったかも。
二人が体験した今回の出来事で、温は秀永は常に強いと思い込んで、秀永が甘えたい時にそれを拒絶していた自分(作品の中で、秀永が甘えたそうにしていたのにさらりとそのサインを流したところがありましたよね)の行動に気付き、秀永は自分の弱さに気付き。
この経験が二人のこれからに生かされ、相川たちのようなカップルになっていくのでしょうね。
この本のラストにある「パイロットランプに願いを」で、秀永を「年を食えば食うほど、どんどんカワイイなる気ぃするな」と温が思うところでそう感じました。
相川もきっとそうなんだろうなぁ。ありゃ、可愛いもんなぁ。40前なのにアレだもんなぁ。
今作で大活躍の相川、「何でやねん!」ラブ~
な私にはたまらない作品でした。相川は相変わらず男前で、土屋は相変わらずワンコで。周囲からは素敵でデキる大人扱いされてますが、相川の前では青い発言しまくりな土屋に萌えました!
久しぶりに相川のおでこ叩き、それに嬉しそうな顔をする土屋を拝めて、また、二人の甘い生活を垣間見れてすごくハッピーでした。
「何でやねん!」で始まった芸人もの、違うキャラのお話ではありますが、「月も星もない」は恋人で相方である二人の喜びと辛さというテーマで深く繋がっています。そして、「月も星もない」の中でも描かれているように、敗者となる人がたくさんいる、そんな人にスポットを当てた作品「それは言わない約束だろう」に繋がる。
もちろんそれぞれで楽しめる作品たちですが、すべて読むとより深く考えさせられるなぁと。
改めて全作を読み返したいと思います。
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