椹野道流先生はいろいろなシリーズを書かれていますが、やはり
代表作と言えば奇談シリーズでしょう。
私自身大好きな作品で、ブログを始めた頃に奇談について書いては
いたのですが、本当に簡単な説明しかいていなかったので、
もう少し奇談について語ってみようと思います。


ミステリ作家で追儺師(ついなし)でもある天本森と、蔦の精霊を母に

持つ助手の琴平敏生が、人に害をなす霊や妖魔が起こした事件を

解決していくお話がベースとなっています。

危険な目に遭いつつも、悪にはひるむことなく、悲しい霊などはその

悲しみを癒しながら祓っていく、スリリングでハートウォーミングな

お話です。


それに加え、家族縁が薄い主人公二人が互いをかけがえのない

パートナーとして愛し合いつつ、周囲の人たちとも優しい絆を結んで

いく、すごく優しいお話です。


天本森はクールビューティーな容姿に冷静な判断力を持つカッコイイ男。

そして! 家事も得意で、食いしん坊な敏生に日々せっせと餌を

与え続けています。

そんなクールでできる男・天本ですが、ミステリ小説の締切前と、

大の苦手の夏には人が変わったようになるところも楽しいです。

で、お相手の食いしん坊・敏生は、天本の助手をしながら、画家と

なるべく頑張っている元気な男の子です。

(余談ですが、椹野先生が脳内メーカーで「琴平敏生」で入力した

ところ、その脳内、「食」だらけとなったそう。すげー!脳内メーカー)

すごく綺麗な心の持ち主で、その優しさに癒されますよ~。

敏生が天本の家の側で体調不良で倒れ込んでいるのを天本に助けられ、

二人の生活が始まります。

クールに霊障を祓っていた天本ですが、霊や妖魔にまでその優しさを

惜しみなく与える敏生と触れるうちに、過去にとある悲しい出来事から

人と距離を取っていた天本も少しずつ変っていき……。

そして、家族縁が薄く、淋しい生活を送っていた敏生も、天本との

生活から大きな安らぎを得ていきます。

天本家の生活の様子、すごくいいんですよ~。

美味しそうなものがたくさん出てくる、よだれが垂れそうになるお話です。

特にクリスマス~。

天本がせっせと鶏の丸焼きを焼きます。

なので、「クリスマス」と言えば「奇談」が浮かぶようになってしまいましたよ、私。

暖かくて素敵な家庭ですよ~。


そんな彼らを取り巻く周囲の人たちとの交流も優しいものです。

天本の式神・小一郎は、ちょっと野性的な雰囲気の男前で、主の

天本第一!な忠義者。

最初の頃こそ敏生に反発していましたが、そのうち敏生と打ち解け、

兄弟のような関係を築いています。

この小一郎が良いキャラなんですよ~。

好奇心が旺盛で、敏生に「つきあってやってもいいぞ」と横柄な態度を

とりつつも、すごく楽しそうに行動を共にしているのです。

最初こそ人のような感情は持たないと言っていましたが、敏生との

交流から様々な感情を得るようになってきています。

敏生と小一郎の関係、読みどころのひとつです。


そして、「鬼籍通覧」シリーズにも登場する龍村と彼らの交流も

読みどころのひとつ。

龍村は天本と高校の同級生で、かなり親密な友人関係だったのですが、

天本の哀しい過去絡みで縁遠くなっていました。が、「人買奇談」で

再会、それから天本と敏生とってかけがえのない人となっていきます。

天本と敏生は職業柄怪我をしやすく、そんな二人の主治医となって

助けてくれる、素敵な男性です。

……本業は遺体相手の監察医ですが。

「鬼籍通覧」では厳しい先生ですが、今シリーズでは優しくて頼りに

なる男。龍村ファンって多いんだろうなぁ。


そしてそして!

途中出場ですが、「妖魔なオレ様と下僕な僕」にも出てくる

辰巳司野も外せないキャラのひとりです。

「琴歌奇談」から出てくるのですが、チョイ役なんてもんじゃなく活躍。

敏生に物からそれに込められた思いを読み取るリーディングを教えたり、

天本と共に追儺をしたりと、大活躍です。

「尋牛奇談」からは正路も登場、敏生とはご主人様のお許しを得て

交流を深めます。

敏生や小一郎とUSJに行ったりもしますよ~。

そこでごにょごにょとご主人様には内緒な話をしたり……。

「妖僕」シリーズ好きな方、必読ですよっ!


というように、他作とのリンクたっぷりで、他シリーズと併せて読むと

美味しさ倍増!です。

天本と敏生、なかなかくっつかないままお話が進むので、ラブ面重視な

方はちょっと物足りなく感じるかもしれませんが、モヤモヤラブも

なかなか良いですよ~。

Hはとある理由からお預けカップルなので、H重視の方もちょっと……

かもしれませんが、ハートウォーミングなお話好き、ほのぼのした

日常が楽しめる作品が好き、不思議な現象が好き、男前がたくさん

出てくるお話が好き、旨そうな料理が出てくるお話が好きな方におススメです。

とにかく長いシリーズなので、手に取りにくいことは分かってますが、

年末年始にどうでしょう?




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