マイニチ@SPICE -412ページ目

今日の「結婚とは?」、今日の私。

 来年に結婚を控えた友達と話していて驚いた。
 なんかこう、神々しいというか、地に足がついているというか、悟りをひらいたというか。
 ついこの間まで一緒になって
「もーどうしよー」
とか
「聞いてよ昨日さー」
とか言ってたはずなのに、なんだろうあの落ち着き。あの輝き。あの悟り。
 そうだ、悟っているんだ。
 結婚とは、何かを悟ってするものなのか。
 
 結婚した友達も、あんなにはじけてたのに、あんなにフワフワしてたのに、あんなにスリリングだったのに、なぜかみんな『いるべき場所にいる』オーラを出している。なんだ?なぜなんだ??

 私なんて今も手探りで、進んでいるのか下がっているのか落ちているのか昇っているのかわからないというのに。
 んー、何がいけないんだろうなぁ。
 思いつくところがありすぎてどこからどうしたらいいのかわからない。

 今日友達に言われた言葉。
「hakuは・・・そういう星の下に生まれたんだと思う。」

 あぁ、うん。
 私もそう思う。

CTとMR

 一週間後、血液検査の結果を聞きに病院へ。ついでに、前回CTも撮っていたのでその結果も聞く。
 血液検査ではSLEの症状が落ち着いていることが判明。抗体もさほど活動していないということで、SLEの薬を始めるのは見送ることに。APSの薬だけ継続。副作用の殆どない薬なので、飲んでいても全く変化無い。助かった。
 CTの結果も大丈夫だった。先生は私のこれまでの症状の説明を聞いて、一度脳梗塞を起こしかけたのではないかと心配していたらしい。でもその形跡はないとのことで心底ほっとした。
 ただ念のため、MRも別の日に撮ることに。
 この病気のことで病院に通い始めてから、検査検査の日々だ。
 ついでに目がおかしいので眼科にもかかったが、全く異常なしとのこと。異常がないのは嬉しいが、どうしても目がおかしい。検査しても異常がないことと、この病気が発覚した頃からおかしくなってきたことを思うと、多分SLEのせいで原因不明の症状が出てるんだろうなと思う。

 それからしばらくしてMRを撮りに病院へ。
 映りを良くするため?の造影剤を使うという。注射器から伸びたチューブを腕に繋げる。血管に針を刺すのだが、看護婦さんが挙動不審。聞くと
「もしかしたら血管突き破っちゃったかも。」
とか言う。こっちは血液止まりにくいんだから、そういうことやるのやめてくれ・・・と思う。
「痛かったら言って」
と言われるが、そう言われてみると痛い気もするし、気のせいなきもするし。
 腕に造影剤の注射器をつないだままMRに乗り込んだ。初MR!!
「工事現場みたいにうるさいから覚悟しておいてね」
と言われてはいたが、本当にうるさい。うるさくてビクッとしてしまった。動いちゃダメなのに。
 でもすぐに慣れて、途中で寝てしまった。最後の方で看護婦さんが横に来て、
「造影剤入れますからね。」
と言った。結構量があったから入ってくる感触わかるかなーと思ったけど全然わからなかった。ただ軽い痛みがあった気がする。
 そんなこんなでMR終了。20分くらい入ってたかなーと思ったが、聞くと40分入っていたらしい!ビックリした。
 造影剤を入れる為に繋いでいた針を抜く。痛い。これは痛い。脱脂綿をテープで貼付けられた。
 検査着から着替えてトイレに行き、なんか腕痛いなーと思って袖をまくってみてビックリ!!
したたり落ちそうな程血が出ている。脱脂綿は既に真っ赤。服につく前に気付いて良かった(そういう問題じゃないけど)。
 さっきの検査室に戻ったが誰もおらず、廊下ですれ違った看護士さんを呼び止めて止血してもらった。ああ驚いた。湿布まで貼られた。ひんやり気持ちいい。
 造影剤の影響で具合悪くなるかもしれないと事前に説明されていたが全くそんな様子も無い。つくづく丈夫な体だ。病気なくせに。

 こうした通院はいつも、会社を抜けてきていた。
 なんか色々な衝撃とか、初めての体験とか、あれやこれやをしつつ、すぐに会社に戻って仕事という。今思えばちゃんとお休みとって行けば良かったのに。
 きっといつものことながら、自分で気付かないうちにストレスとなっていたのだろう。

 看護士さんと廊下を歩きながら話していた時、
「毎日仕事が忙しくて、遅い時は22時くらいまで会社にいるんですよ。」
と笑いながら言ったら、
「そんなのとんでもない!!会社の方に説明して残業はしないように出来ないんですか?そんな生活続けていちゃダメですよ。」
と真顔で言われた。
 そりゃそうだよね・・・。

もう一つの病気

 病院を変えて、今の主治医さんと初対面だった日。
 人生において本当に本当に忘れられない日になりそうだ。

 診察室に入って、先生がSLEについて軽く説明。そして続いて「◯◯◯・・・も併発していますね」と困ったような表情で先生が言った。聞き取れなくて、2回くらい聞き直した。メモをとろうと思ったけど字がわからないと言ったら、先生が血液検査の結果用紙に書き込んでくれた。
 
 抗リン脂質抗体症候群

 どこかで聞いたような見たような、でもそれまでの私の人生には一度も関係してこなかった病名。見ても聞いても全くどんな病気かわからない。
 聞くしかないだろう。私は至って明るく聞いた。
「先生、それってつまりどういう病気なんですか?」
「SLEで体内の抗体が異常な行動をしている影響で、血液にも抗体が作用してしまっています。この病気は、体内で血液が固まりやすいところと固まらないところが出来てしまうの。」
「?それってどういうことですか?」
「脳梗塞を起こす可能性があります。」
「え?脳梗塞??それって結構やばいですよね!」
「まだ若いのにと思うかも知れないけど、実は20代後半の女性に脳梗塞を起こす人は多いんですよ。」
「のうこうそく・・・そうなんですか、知りませんでした。」
「要は血液が固まってしまい梗塞を起こすので、脳梗塞以外にも心筋梗塞とか、梗塞が起こる場所はどこかわからないの。」
「それってかなり大変な病気ですよね。やっぱり治らないんですか?」
「そうね。現代の医学では完治する方法は見つかっていないの。」
「そうですか・・・いや、ビックリしました。」

 この会話を、
「今日は天気がいいねー。」
「あらでも、午後から雨みたいよ。」
「え!そうなの?私てっきり晴れだと思って洗濯物出してきちゃった。」
というようなノリでしていた私。先生は終始困ったような笑顔で、明るくテンション高めな私を見ていた。
 その日、抗リン脂質抗体症候群(略称:APS)の薬が出された。毎日朝1錠、小さな白い錠剤を飲む日々が始まった。この薬は血栓が出来るのを防ぐ薬で、簡単に言えば血を固まりにくくする。だから出血したら止まりにくくなる。怪我をしないように、気をつけようと思った。
「血栓が出来て脳梗塞起こすよりは、血が止まりにくい方がいいですもんね。」
と先生に言うと、
「それはそうだけど、hakuさんは足に皮下出血を起こしているように、本来出血してはいけないところで出血して止まりにくいのも良くはないのよ。」
と返された。そりゃそうだ。でもやっぱり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすくらいなら多少血が止まりにくい方がいい。

 病院を出て、空を見たらすごくすごくいい天気だった。青過ぎない青空がそこにはあって、病院を囲む緑がやたらときれいで、日差しが暖かくて、素晴らしい日和だった。
 日光を避けるようにしながら親に電話をした。仕事中のはずの親はすぐに電話に出た。私からの報告を、今か今かと待っていたに違いない。
 診察結果を話した。第2の病気の話も。
 親の、落胆が。言葉にならない悲しみが。苦しみが。電話の向こうから聞こえてきた。
 親がなんと言ったか詳しく覚えていないけど、大きすぎる衝撃を必死に受け止めながら、私を励まそうとしていたのを覚えている。私は笑って応えていた。
「大丈夫大丈夫。お薬もらったし、これから検査が幾つかあるけど、こんな早くに見つかっただけ私はラッキーだったんだから。」
 電話を切って車に乗った。

 先生の口から『脳梗塞』という言葉が出たとき、生まれて初めて思った。
 私、死ぬんだ。
 死ぬんだ。

 死ぬんだと思ったら、笑ってしまった。