マイニチ@SPICE -245ページ目

ずしーんときた

 先週のこと。

 もう数ヶ月顔も見ていないし連絡も取っていない友達がいて、なんだか最近しきりに『メールしなくちゃ』という気分になっていた。今年結婚した彼女は、結婚前まで同じ会社で働く同僚で、出会ってから6年お互いに起こっていることをいつも話し合っていた存在だった。結婚式のドレスを選ぶのも、メールで写真を何枚も送ってもらって感想を伝えたりして。2次会の幹事をやったりして。
 どっちが先に寿退社するか、コロコロと状況が変わる度に
「そっちの方が早いよ」
とか言い合って、辛いときは支え合ってきた。彼女の送別会で、我慢していたのに耐えきれずに号泣してしまった。あれ以来、私は送別会で泣くことはなくなったのだ。あれ以上寂しい送別会はないと思うから。
 『さすがに今日こそメールをするぞ!』と思っていた日に、突然彼女が会社にフラッと現れた。呼ばれて仕事中にちょっと抜け出して会いに行くと、変わらないかわいらしい笑顔でそこにいた。笑顔はそのままなのに、何かちょっと雰囲気が変わっている。結婚して落ち着いたせいなのかと思っていたら
「実は、妊娠したの。」
と。
 彼女は、母になっていたのだ。

 まだ本当に小さいのに、しっかり人の形をしている写真を見せてもらった。お腹に手を当てて微笑む彼女は、1年前まで私のようにジタバタと人生を歩んでいた人とは思えないくらいの穏やかさで、溢れんばかりの幸せを身にまとっていた。
「でね、家を建てることにしたの。」
といって、控えめに微笑んだ。


 赤ちゃんが出来た。
 ものすごくおめでたいことで、おめでとーーーー!!!!と言いたい気持ちと同時に、わずか1年足らずで私と彼女はもう全く違うんだと思い知らされて、ずしーんときた。家を建てるということも、いつか家を建てたい私にとっては夢でしかなく、彼女には現実なんだと実感した。
 彼女がとても幸せなことがすごく嬉しくて、本当に良かったと思うのに、この言いようのないずしーんとくる衝撃には自分自身言葉をなくす程驚いた。自分がそんなショックを受けると思いもしなかったのだ。
 1年経っても、まだ相変わらずジタバタ人生を歩んでいる私を振り返ってしまった。

 どうもがいたって、これが私の人生だからそれでいいのだと今は思える。
 だけどあの瞬間の、ずしーんとくる思いは今もジンジンと体に残る。
 よく考えてみたら自分の周りも着々と妻になっていて、子供がいたりするのだ。もう28といえばそれもそうだし、まだ28と言ってもそれもそう。
 結局私は私のままで、他の誰でもない。 

 私の憧れでもある彼女が、妻になり、母になるこれからを見守っていきたい。
 会社でこっそり隠れて泣いた私たちはもうどこにもいないのだから、これから先だけを見ていこう。
 あのずしーんは、自分を見つめるいいきっかけだったと、今なら思えるのだ。

仕事で凹む日もある

 18時。
 まだ今日はやるべきことがあるからやっていかなくちゃと気合いを入れ直す。残業時間だし、やるべきことをきっちり手早くやって帰ろうと。
 今月形になる予定のある仕事の追い込み。それは他の部署の名前で出す仕事で、中心で指揮をとっているのは私だが、あくまでも他の部署の仕事。私が表面に出ることもない。私が中心にいるのは、それが出来る人が私しかいないという上の判断で、私は上の意思に従って形を作っているところだ。
 「こんなのがあったら更にいいよね」
と誰かが言っていたのを思い出し、まだ間に合うからその準備をしていた。それは簡単なシール作り。出来上がったものはシンプルでかわいかった。
 早速その本来の部署のリーダー1人に見せて、『これを貼ろうと思う』と伝えた。その答えは、
「今回の企画でこれ以上の負担を自分の部署に強いることは出来ない。次はもうやる人がいなくなる。お金を払ってもいいから他でやって。」
というものだった。
 前から何度か、今回の企画を負担だと言っている話は耳に挟んでいた。私にしたら、自分の部署の仕事を差し置いても頑張って取り組んできた企画で、それをやろうと言ったのは彼女達の上司であったのに、その上司達には何も言わずに私には明らかに不満をぶつけてくるそのリーダーの行動は不可解だった。負担負担と何度か言われたが、私は趣味でやっているとでも思われているのだろうか。
 そのシール貼りという仕事は、数人で手分けすれば5分で終わる仕事だった。シール自体は全部私が作るのだから、彼女達は貼るだけで良かったのだ。それを、明らかに不快そうに、あなたのように暇じゃないのと言わんばかりの言い方で突き返された。
 正直そこまでとは思わなくてすっかり虚をつかれ、一気にモチベーションが下がってしまった。
 下がったモチベーションで他の仕事をしても効率が悪いことは目に見えているので、今日はもうそこで仕事を終わりにすることにした。
 他の部署の名前で発表される仕事をせっせとしている自分が少し悲しかった。社内で私は様々な部署に関わる仕事をしているため、どうも暇人に見えるらしい。どんな大きな仕事をしても、暇だから出来るんでしょ位にしか見られないこともある。いつもせかせかしてテンパっているように見られたくないから自分のペースを守って仕事しているので思い通りでもあるが、こういうときはさすがに凹む。

 凹んだし帰ろう~と思いつつ、最後に隣の席の先輩にシールを見せたら、
「わぁ~かわいいね!!」
という言葉が。別部署のもう1人のリーダーにも見せたら、
「うわぁ!いいねこれ!!貼る貼る!これくらいすぐ貼れちゃうよ!」
という言葉が。

 ああ良かった。
 危うく自分の仕事は自己満足でしかないのかと思うところだった。
 こんな先輩達の何気ない言葉に救われて、下がったモチベーションをぐぐっと上げながら帰ってきたのだった。

夜空に笑顔

 昨日の夜は、夜空に笑顔が浮かんでいたらしい。
 最初写真を見たときは全くわからなくてしばしポカンとしてしまったが、しばらくしてわかった。月がにっこり笑った口の形をしていたのだ。
 金星と木星が目になって、三日月の口元。
 なんて大きくて、なんてかわいらしい笑顔なんだろう。
 最近夜空を見上げることは少なかったけれど、冬になって一層空気が澄んだ今だもの、また夜空を意識して見上げよう。

 夜空の笑顔を見つけた人達は、きっとみんな笑顔になったんだろうな。