住まいの欠け

結婚して十数年。
子どもにも恵まれ、特別大きな問題があるわけではないのに、いつの頃からか夫婦の会話が減っていました。
妻は小さなことで悩むことが増え、夫も仕事から帰ると自分の時間を過ごすばかり。
「昔はもっと家族で話していたのに……」
そんなことを考える日が増えていました。
そこで住宅の風水を見てもらうことにしました。
図面を広げて最初に指摘されたのが、北側の大きな欠けでした。
「北は夫婦関係や男女の縁、精神的な安定などとも関係する方位です。北が大きく欠けている家では、その作用が不足する場合があります」
そう説明されると、妻には思い当たるところがありました。
確かに、この家に暮らしていて感じるのは、どことなく**「冷えた感じ」**だったのです。
「でも、家の形なんて簡単に変えられませんよね?」
問題はここでした。
風水で「北が欠けています」と言われても、住宅は置物のように簡単には動かせません。
そこで、まず考えたのが屋外環境から補う方法でした。
北が坐山となる条件の住宅であれば、敷地や周囲の状況を確認したうえで、北側にある程度のボリュームを持たせる方法を検討します。
例えば、コンテナタイプの物置などを適切に配置する方法。
あるいは、
ある程度の背丈まで育つ樹木を北側に配置して、背後を補う方法です。
もちろん、何でも北に置けばよいわけではありません。
建物の向き、敷地形状、道路、周囲の建物などを確認して判断する必要があります。
それでも、
「欠けているから、もうどうしようもない」
と考える必要はありません。
住まいの外部環境から改善できることもあるのです。
数年後、思わぬところから転機が来ました
やがて子どもが大きくなりました。
「そろそろ自分の勉強部屋が欲しい」
それまで兄弟で使っていた部屋では、勉強にも集中しにくくなってきました。
夫婦で相談しているうちに、妻が思い出しました。
「そういえば、北側が欠けているって言われたよね」
どうせリフォームするのであれば、単に部屋を仕切るだけではなく、家全体を見直してみよう。
そこで再び図面を検討し、北側の欠けていた部分を利用して子どもの勉強部屋を増築することにしました。
結果として、
子どもの成長に必要だったリフォームが、北の欠けを解消するリフォームにもなったのです。
「前より、この家が落ち着くね」
完成後、家族が感じたのは数字では表せない変化でした。
以前より家族が自然に集まるようになり、夫婦の会話も増えてきました。
子どもには自分の勉強場所ができました。
妻が何気なく言いました。
「前より、この家が落ち着くような気がする」
家は、建てた瞬間に完成して、その後ずっと同じものではありません。
結婚、出産、子どもの成長、独立、そして老後。
家族の形が変われば、必要な住まいの形も変わります。
北の欠けが見つかったからといって、不安になるだけでは意味がありません。
最初は樹木や外構など、現在できる範囲から考える。
そして増築やリフォームの機会が訪れたなら、「必要な部屋を増やす」と「風水上の問題を改善する」を一緒に考える。
これも住宅風水の実践的な活用方法なのです。