
原題: the Lunchbox
制作:インド・フランス・ドイツ
製作国が複数なのでボリウッドには分類してませんがインドが舞台です。
言語はヒンディー語です。
ラブストーリーというより、人の心の変化を描いた映画だとおもい、映画ドラマに分類しました。
すんごくいい映画でした。
あらすじ
大都市ムンバイのオフィス街では、昼時にダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人が、慌ただしく複数の弁当箱を配って歩く。
ある日、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕をふるった4段重ねの弁当が、男やもめのサージャンのもとに誤って届けられる。イラは空っぽになって戻ってきた弁当箱を見て喜ぶが、その弁当を食べたはずの夫からは何も反応がない。
不審に思ったイラは翌日、弁当に手紙を忍ばせる。そこから二人の文通が始まる。
サージャンは妻をなくし、それから仲良い人もいず、一人の人生を送っていた。そして退職が近づく中、引き継ぎの新人も彼の生活に介入してきて、彼の気持ちが少しずつ変わっていく。一方イラのほうは、テレビのニュースの母子の自殺をみて考えたこと、夫の浮気に感付ついたこと、弟のことなど手紙に綴っていく。
二人はいつしか静かに惹き合っていくが…。
2013年・第66回カンヌ国際映画祭監督週間で観客賞を受賞。
てなかんじは予告からもなんとなく予想できるとおもいます。
この映画は地味だ、最後がよくわからない、などと言われていますが、それは「きっと、うまくいく」や他のインド映画と比べられるためと思われます。
あれを望んでいくとこの映画は全く違います!!!!だから注意!!
大人びた、繊細な心を、役者の表情や言動で紡いでいく映画です。でも原点は多分一緒。「きっと、うまくいく」と描き方が違うだけです。
実際、挿入歌はありません、すこし物悲しいサウンドトラックがたまに流れるくらいです。あとは自然の音を大切にとっていると思います。列車の音であったり、仕事場の音であったり…そういう意味では静かな映画です。踊るなんてことは全くありません。
だって手紙のやり取りなんですよ。だから主人公たちは行動する時静かに行動します。ひとりで喋ってたらおかしいでしょう笑
かといって雰囲気映画なのか、というとそうではありません。
ちゃんと一つ一つの言動に意味があります。意味のない雰囲気だけのカットなんてありませんでした。そういう意味では見やすいと思います。
そうそう、退屈な映画では全くありませんでした。(そりゃあ、【歌って踊る】を望む人には退屈だと思いますが…笑。それはジャンルが違うものを比べるというものです。)
場面展開もよく考えられています。
お弁当に手紙が入っているのですが、その内容は観客も知らないことが書かれています。
両方の状況をわかっている観客はもどかしいのでは?という心配はありません。
どういうことかというと、イラとサージャンの行動は最初場面をみたときよくわかりません、その後の手紙で明かされるのです。
そうだったのか…と手紙を読んでいる主人公たちの気持ちを一緒に味わえることができる、その作り方には感動しました。彼らが何を考えていたのか、私達も手紙を読む方と同じ『時』に知ることができるのです。
そしてドタバタコメディではありません。
笑うところは結構ありますが、ゲラゲラ笑うのではなく、くすくすと笑えます。ちょっとふりかけたスパイスのように上品に入っています。
とくに重要なのはサージャンの部下の新人。彼は孤児で彼の後を次ぐことで出世できると喜びます。しかしサージャンはそんな彼を最初鬱陶しく思います。しかし、どんなに突き放しても彼はサージャンに声を掛け、二人の絆が深まっていきます。彼は本当にいい役です。すごく人間味にあふれているのに、同情や感動を強要しない人柄というか…。あっさりと深いそんな人物です。書類の上で野菜を切りながら通勤する彼はすごい笑
あと私が特にいいなあとおもったのは最初は堅苦しかったサージャンが手紙によって少しずつ変わっていく姿でした。たばこをやめてみたり、近所の子供に優しくしてみたり、妻の好きだったビデオを一晩中みたり…。新人との仲が深まる姿もいいなあと思いました。
サージャンの細かい演技も見どころです。いったん文通が始まると、手紙が気になってしかたがないが、誰にも邪魔されず読みたいため周りを気にする可愛さ。お弁当が仕事中に届いたら、思わず匂いを嗅いでしまう可愛さ。
もう一人いい人物がいました。イラのアパートの上の階に住んでいるおばさんです。イラはおばさんになんでも相談しますが、おばさんはいつも声だけが帰ってきます。上から籠を落としてスパイスをくれたり。そんなおばさんとおじさんの話も手紙の内容に入ってきます。
よくあるインド映画は『おもったその時に行動だ!』みたいな恋愛がほとんどですが、こちらは既婚の主婦と退職前のサラリーマンということがあって、『じっくりと考えて行動するタイプ』の恋愛です。少しずつ変わっていく心の変化を絶妙にとらえたシーンを積み重ねていく映画なんです。
で、オチなんですが。
「意味がわからなかった」「最後どうなったの?」「突然すぎる」という評価があったのですが…。
え、オチ、あったじゃん。
とかおもったのですが…。
ここからちょっと最後の場面について述べますので飛ばす人はどうぞー
でも軽く書くのでそこまでネタバレというわけではありません。
この映画はそこに行くまでの心情の過程が一番味わい深いところなので…。
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めぐり逢わせのお弁当 最後の場面・オチについて
イラが若くて未来があることを思い、サージャンは自分が年老いているため合わない決心をしていた。イラは娘とサージャンの職場を尋ねるが、彼はもう退職したあとで遠くに引っ越すことに決めていたことをしり、しかたなく暗い気持ちで家に帰る。サージャンは隠居生活をおくるため列車に乗るが、やはり家に戻ってくる。イラは一人で今日家を出ようか…という思いを誰にだすこともない手紙に綴り、窓辺で思いにふける。いっぽうサージャンはお弁当の配達人たちに(多分イラの居場所の)話を聞き、彼らと、そして毎日運ばれているお弁当達と一緒に、(多分イラの場所へいくため)列車に揺られる。
ここで終わります。
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ネタバレおわり!
()の中は私の解釈。完全にそうだとおもって、オチめっちゃあった!と思いました。
しかし一緒にいった人は、「え、イラのとこにいったのあれ。」と言われて驚愕!え、そうじゃないの??だってお弁当配達のひとたちにめっちゃ話聞いてたやん!お弁当と一緒に職場に行くわけ無いでしょ?だったらイラのところじゃない??って言ったら、「なるほどインド人の考えやね!ポジティブ」といわれたのですが…。
まあいろんな解釈があるけど、つまり、
二人の行動が変わって、特にサージャンの行動が変化して、これから新しい歯車が動き出した!ってところで終わります。
たしかに場面的には「ここで終わりだ!」ってかんじのところはなく、いきなりエンドロールになりましたが、私はそれがむしろ良かったと思います。あとで考えると、ふむふむ、なるほどここから次の物語が始まるってところで切ったんだな、と納得できます。
いままでの歌って踊るタイプのインド映画は「解決だー!終わりだー!」的なところが見どころだったんですが、これは違うタイプの映画ですね。
たまにブチっと終わるタイプのものがありますが、そういうイライラ系(笑)ではなく、かえってお洒落だったと思います。
泣けるのか?という質問には
大号泣シーン、ここぞ泣いてくれシーンはありません。日常と一緒ですね。悲しいこともある、辛いこともある、でもなんとなく時間が過ぎていく、心にじわーっとくることのほうが多い。そんな雰囲気です。
社会が発展すると同時に、家族に、周りに目を向けることがなくなった、そんな社会で息づく人間味を描いた繊細な作品だと思います。
子供から大人まで見れる作品となっていると思います。
私は久しぶりに人の気持を書くのが上手な脚本の面白い映画だなあと感じました。
じんわり度10点
インド9点
お弁当いい匂いしそう度10点
少しの悲しみ9点
少しの喜び9点
歌わない踊らない、ちょぴり大人なインド映画
ボリウッド私は無理だった…という人もこれはかえっていいかもしれません。
本当におすすめですよ。

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