下校途中、校門で待ち合わせ


(あーあ、八宮のやつ遅いなぁ・・・)


奈月 「ふぅ・・・」


校門から出る多生徒たちをよけて、誰かが声をかけた


小池 「なーっちゃん!・・・ひとり?」


松坂 「今からカラオケ行くんだけどさ、行く?」


奈月 「いえ。私今から用事があるので」


サッカー部の先輩の、小池先輩と松坂先輩が来た


松坂 「えっマジ?用事って?」


奈月 「えーっと・・・その・・・」


(八宮とデートなんて、言いづらいなぁ)


小池 「ねぇ、八宮なんかほっといて、俺たちと遊ばねぇ?」


奈月 「こっ小池先輩っ!何言って・・・」


松坂 「用事ってそれかぁ~!じゃ行こうよ!」


(じゃって言われても!)


小池 「ほらほらっ。マネージャーの特権だよ」


奈月 「そんな特権ありませんっ」


松坂 「怒った顔もかわゆいなー!なっちゃん」


すると校舎から声が聞こえた


八宮 「・・・るなー!」


松坂 「むむ。あの声はまさか」


八宮 「奈月に触るなーーー!」


ボカッ!!


強烈な衝突とともに誰かが手を握る


八宮 「逃げるぞ奈月っ」


奈月 「きゃっ、ちょっと待って八宮!」


小池 「こら!なっちゃん連れてくなー!」


松坂 「うぅ、カラオケ・・・」


王子は立ち止まってこう言った


八宮 「すみません先輩!こいつ、俺の女なんで!」

「時間を越えて、3年前と3年後が、繋がっている・・・」

《そうだ。まぁ、あんまり深く考えると面倒だからな》

「うーん・・・」

「だから深く考えんな」

「ごめん、くせで」

《今私がいるこの無人島には、結界が張られている》

「結界?」

《そんな強力なものではないが、簡単には破れん》

「なんだよ珠莉。お前、魔女の中だとトップなんだろ?」

《ふっ、そうだがな。私にも出来ないことはあるのだ》

「そうだ、珠莉さんさっき、なんで小陽の周りに男と女がいるってわかったんですか?」

《ああ、あれはカンだ。たまたま当たったからビックリしたよ》

 この人、あてになるかな・・・。

「・・・」

《この計画を行っているのは、私の幼なじみの『鬼龍』だ》

「きりゅう・・・」

《あいつはまだ、お前らがこうして動いていることを知らぬはずだ》

「でももしかしたら気づかれてるんじゃ」

《まぁそうだとしても大丈夫だ。そこの賽銭箱に私の骨があるのならな》

「ここに骨があるということは、あなたこっちだと死んでる・・・?」

《はははっ。今更か知鶴》

「こいつにぶいんだよ」

「うっうるせぇ!」

《1ヶ月ほど前に無人島に鬼龍がきた》

「鬼龍さんが?」

《そうだ。手下をぞろぞろと連れてきていてな》

「・・・」

《無人島でも、私の力なら簡単な魔法は使える》

「簡単な魔法って、魔法にも簡単なのがあるんですね」

《まぁな。海の水を『聖水』に変えて、ヤツの動きを監視した》

「・・・」

《すると、3年後のこの無人島にくるとわかったんだ》

「すご・・・」

《予定どおり鬼龍は来た。監視を続けると、樽から50メートル離れたところに、骨があった

「それが・・・これ」

「イコール珠莉ってわけだ」

《ああ。この神社には、なぜか魔力が強くてな。だからきっと鬼龍のやつもここに私の骨を入れたんだ》

 でもなんで賽銭箱・・・?この人たちよく分からねぇ。

《よし、説明はここまでだ。小陽、指輪を骨に》

「ああ」

 骨に・・・指輪!?


 キュイィーーーン・・・


「うわあああああ!!?」

「あああああっ」

 小陽が骨に指輪をはめた瞬間、急に白い光に包まれた。


 シュウウウウ・・・


「げほっげほ」


「よくやった。小陽」


 聞き覚えのあるこの声。

「うまくいったか・・・」

「ああ、だが・・・反動で起きてられない・・・、寝る」

「はぁ?・・・おっおい!」

 崩れるように倒れたこの人は


「この人が・・・珠莉・・・さん」


 美しい髪、凛々しい顔、スラッとした体・・・はじめてみるような美しさだった。

「ふっ、噂どおりの美人だな」

「ああ・・・」

 俺たち3人は言葉を失った。

「しかたねぇな」

「おっ大丈夫か?」

 そう言うと小陽は珠莉さんをおんぶした。

「軽すぎねぇか?こいつ」

「仕方ないよ。ずっと無人島にいたんだから」

「・・・この先に・・・たしか・・・食堂屋さんがあった・・・気がします」

「本当?ユノちゃん」

「は、はい・・・」

「サンキュ。ユノ」

 小陽はニッと笑った。

 それからしばらくして、山道を歩いているとき、珠莉さんは目を覚ました。

「よく寝たか?珠莉」

「ああ、まぁな」

「そうだ、珠莉さん、のどかわいてませんか?そこに水が・・・」

「それは無理だ」

「えっ」

「実は、本当の私はまだ無人島にいる。今お前たちが見ている私は、幻覚にすぎない。だからそういった空腹などは感じんのだ」

「へぇ・・・」

「なんだか、またゴチャゴチャしてきた!!」

「深く考えるなと言ったろ。知鶴」

「・・・俺、ちょっと散歩してくる」

 小陽はそう言うとふいっとどこかへ行ってしまった。



「コヒナ」

「・・・」

「あなたは一体、私とどうなりたいのですか?」

「・・・」

「では、妹とどんな関係になりたいのですか?」

「・・・じゃあ若葉。お前は俺と、どうにかなれるのか?」

「・・・コヒナ、あなたは私に、こう尋ねているのですね?」

「・・・」


「『お前は俺の女になれるのか』、と」


「いや、そこまで品のねぇのことは言ってねぇ」

「まぁけがらわしい」

「けがらわしくねー」

「・・・」

「だいたいなにが妹だ。俺を兄とも呼んだことがないくせに。それにお前、俺を兄と思ってないだろ」

「当たり前です。血も繋がってませんし」

「!!」

「・・・」

「なぁ、なんでお前なんだ?」

「・・・」

「どう考えても不合理だろ。今まで付き合った女と違って、色気も胸もなんもねぇのに」

「・・・」

「なんでこう、落ち着かないんだ?気になるんだ?」

「それはただの寝不足です」

「ちがう」

「・・・」

「若葉。ともかく、しばらくは誰ともどうもなるな。いいな」

「・・・」

「・・・」

「では、すでにどうにかなっている場合は、どうしますか?」

「!?・・・かっ彼氏がいんのか!?」

「・・・」

「・・・」

「合理的に考えて、どうでしょう?」



 若葉・・・。

「小陽っ」

「知鶴・・・」

「なにしてんだよ、こんなところで」

「・・・なぁ知鶴」

「うん?」


「若葉に彼氏がいたって噂、知ってるか?」


 ドキ!!!!

「・・・」

「わっ悪りぃっ、急に変なこと言って」

「い、いや、全然っ」

 ビックリした、バレたのかと思った・・・。焦ったぜ。

「珠莉たちは?」

「なんか、『じゃ私たちも散歩してくる』って言って、どっか行った」

「そうか・・・」



「ん?」

「どうしたダンジ」

「いえ、この付近で、とても強い魔力を感じまして・・・」

「なんだと?・・・まさか・・・ダンジ!神社の賽銭箱を確認しろ!」

「はいっ」


「くっそぉ・・・あの女・・・なにかやらかしたな?予想はしていたがな・・・」


「鬼龍様!骨が・・・骨がなくなっております!!」

「やはり・・・探せ!今すぐ見つけ出せ!!」

「手下どもを連れ出しても・・・」

「構わん!今すぐだ!」



 ザッザッザッ・・・

「ユノ、あとちょっとだぞ。頑張れ」

「は、はい・・・」

 しかし・・・この『ユノ』って女、どっかで見たことあるぞ?だが、なかなか思い出せん・・・。こいつはいったい・・・?

「ほらっ着いた!」

 ザァァァ・・・

「風の音・・・すごい・・・きれい・・・」

「きれいだろ?よくここに来て、景色を眺めたものだ」

「へぇ・・・」


 鬼龍。待っていろ。お前の思い通りにはさせん。

「わ・・・若葉・・・」



「すべての事には、『意味』があるんです」



「引き上げるぞ」

「あ、ああ」

「せぇーのっ」

 ググッ

「あっいっ痛い」

「はっ」

 小陽が急に手をはなした。小刻みに震えるからだ。こいつ・・・まさか・・・。

「なにしてんだよ!早く!」

「悪りぃ」

 そしてやっと、女のコを引き上げられた。

「ふぅ・・・」

「・・・」

「大丈夫だったか?」

「・・・はい」

「ならよかった」

「・・・あの・・・ありがとうございます」

「いいよ、いいよ」

 女のコは恥ずかしいのか、あんまりしゃべらないし、顔を上げてくれない。

「もうじき赤紫になる、魔法使いが来る前にここを出るぞ」

「うん」

 さっきとは別人のように話す小陽。

「・・・お前も、来るだろ?」

 そう言うと女のコを見つめる。

「・・・いいんですか・・・?」

「なんだよ、ここで抜け殻になって、死にてぇのか?」

「いえ・・・行きます」

「じゃついて来い」

「はい」

 小陽は女のコを、まるで奴隷のようにあつかう。

「あんた、名前は?」

 俺は話題のために、女のコに聞いた。

「・・・はせがわ・・・」

「うん?」

「長谷川・・・ユノ・・・です」

「じゃあ、ユノちゃんでいい?」

「あ・・・はい」

「ついでに俺の名前は、草野知鶴。『知る』に、まんま『鶴』」

「この人・・・は」

 ユノちゃんはゆっくり小陽を指差す。

「こいつは」

「小陽だ」

「こひな・・・さん」

「小陽、呼び捨てでいい」

「はい・・・知鶴さんは・・・」

「ははっ、俺も呼び捨てでいいよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 くっそぉ・・・また沈黙に戻ってしまった!俺すべった事いったかな。



 ザパパパパ・・・

「ああー!いいなぁ!海は」

 って楽しんでる場合ではない!どうにかしてこの結界を破らなくては・・・。

「けど、どうすればよいのだ?」

 サカサカサカっ

「おっ。カニかぁ・・・今のところ、君たちと会話しなければ気が落ち着かない」

 まぁ、あっちの世界で『あいつ』がなんとかやってくれていれば、なんとか破れるかもしれんが・・・。

「きっと、やってくれるかな」



 小陽、お前はまさか『若葉』ちゃんと『ユノ』ちゃんを、重ねてみているのか?

「おい、小陽」

「なんだよ」

「言っとくけど、若葉ちゃんとユノちゃんは違うぞ?」

 小陽の足が、ピタっととまる。

「似てるんだよ・・・なにもかも」

「・・・え」

「姿カタチもろともに・・・」

「小陽!しっかりしろよ」


「うるせぇーな!!お前なんかに俺の感情がわかるか!!


「・・・悪りぃ」

「余計なこときくんじゃねぇ」

「・・・」

 やっぱりな。思ったとおりだ。こいつ、髪の毛が長い子はほうっておけないからな。

「ちっと寄るとこあるから」

「うん」

 しばらく歩き続けると、ある小さな神社についた。

「ここか?」

「ああ。ここの賽銭箱を開ける」

「は、はぁ!?おい、犯罪だぞ!?」

「いいんだよ」

「・・・」

 そう言うと雑にガシガシと賽銭箱のふたをこじ開ける。


 ガシャ!


「中って案外暗いんだな」

「何もみえねぇーな」

 おもむろに小陽は中に手をつっこんだ。

「おっ」

「何かあったのか?」

「ああ、お目当てがな

「お目当て?」


 カランカランっ


「これ・・・まさか・・・」

「ああ。見てのとおり」


「骨だよ」


 ほっ、骨・・・!?

「誰の骨だよ

「この骨は」


「魔女、『珠莉』そのものだ」


「なに言ってんだよ。珠莉さんは今無人島に・・・!」

「ああそうだよ?」

「だったら珠莉さんじゃないはずだぞ」

《いいや、それは私だ》

「だっ誰!?」

《私だ、珠莉だ》

「あの・・・どこから声を?」

《・・・今ちょうど手がふさがっている。小陽、説明しろ》

「めんどくせぇな」

《ほう、ならば取引は無効でいいのか?》

「チっ。わかったよ」

《では頼む》

「一回しか言わねぇぞ。よく聞いとけ」

 すると小陽は、右手の人差し指についた指輪をゆびさした。

「今珠莉が喋ってたのはこの指輪からだ」

「ゆ、指輪・・・」

「この指輪は、取引が果たされねぇと外れない仕組みになってる」

 小陽はゆっくりユノちゃんを見つめた。

「私の顔に・・・何か・・・ありますか?」

「いや」

「気にしないで、いいよっ」

「はい・・・」

「俺は珠莉と取引した」

「なんの」


「俺がこの計画を阻止する変わりに、若葉を殺した犯人を見つけろ、ってな」


「・・・」

「俺は1年前、海岸でビンを拾った」

「ビン?」

「なかには、この指輪と木の皮の切れ端」

「・・・」

「内容はいちいち覚えてねぇけどな」

《覚えてないのではなく、読まなかったのだろう?ククク》

「うるせぇな」

《ま、簡単にまとめると、こいつは取引をもちかけたんだ》

 初対面で、しかも顔もわからないのによく取引もちかけたな・・・。

「あーあ、説明はここまででいいだろ?だいたい事は把握してんだろうから。こいつも状況わからなくなるほど、頭はくさってねぇし」

「頭はって・・・」

《そうか。ならばそこにいる男、女》

「お、俺?」

「わたし・・・?」

「なんだよ、くさってんのか?」

「くさってねぇっつの!!」

《名前を言え》

「草野知鶴です」

「長谷川ユノ・・・です」

《ほう、いい名だな。お前らの目の前にいる骨は私のだ》

「・・・はい」

《私はすでに3年前に死んでいる》

「じゃあ、なんで話せるんですか?」

《それは・・・》

「・・・」


《時間を越えて、3年前の世界とそこは繋がっているのだ》


 じ、時間を・・・越えて・・・!?