松本さんとは付き合わない…

その言葉を聞いて膝の力が抜けた。

流し台に腰で寄りかかりながら

「じゃぁ…いいんだよね?
俺と…ずっとここで暮らすんで?」

「勿論だよ…翔くんが嫌じゃなかったらね」

智くんが悪戯っ子みたいな顔で笑う。

嫌じゃなかったらって…

そんな訳ないじゃんっ!


「嫌じゃないよっ!嫌な訳ないじゃないか!
だって俺は…」


え…?

だって…俺は…?

言葉に詰まって途切れた言葉の糸口を探す。

智くんとずっと一緒に暮らすのは嫌じゃない…?

違うな…

嫌じゃない…って言い方は…


嫌じゃないんじゃなくて 一緒に暮らしたいんだ。

智くんとずっと一緒に暮らしたいんだ!

だって俺は…

だって…俺は……?

智くんが……好き…?

えっ……?

……好き…?

俺は…智くんが…好き…

自分で導き出した答えに戸惑って
漂った視線を智くんに戻すと頭の中で
何かが弾け飛んだ。

ずっと どんよりと重たい雲で覆われていた心が
一瞬でスカッと晴れ渡った気がした。


そうだよ…
俺は智くんの事が好きだったんだ。

ずっとずっと好きだったんだ!

智くんの顔を凝視したまま言葉を詰まらせた俺を
智くんも見つめ返している。

「だ、だって俺…」

やっべ…急に緊張して声が掠れる。

「だって俺は智くんの事がす…」

「あのさ!」

途中で智くんが俺の言葉を遮った。

「今はさ…就活のことだけ考えなよ。
大事な時期なんだからさ…
そうでなくてもスタートが遅かったんだから
今は就活が最優先だよ。
翔くんの夢を叶えるんだろ?」


あ…