テーブルの上に肉まんが二個。

割と食の細い智くんが
肉まんを二個食べるとは思えないから
俺の分も買ってきてくれたんだ…

俺が就職して
別々に暮らす事になったら
こんな風に智くんが肉まんを
買って来てくれる事も無いんだな…

別々に暮らす事になったら
スーツのズボンが皺になるって
怒られる事も無いんだな…

別々に暮らす事になったら…


俺は独りぼっち…


智くんは…
松本さんと一緒に暮らすのかな?


「翔くん?…食わないの?」

いつもでも肉まんを凝視している俺を
訝し気な智くんが促す。

皿の上の肉まんを両手で持ち上げて
一口かぶりつく。

ほんのり温かくて優しい味がした。

「うまい…」

心の声が漏れた。

「やっぱり冬は肉まんだよな?」

智くんが俺の顔を見て嬉しそうに笑って

「面接どうだった?」

少し心配そうに眉を寄せる。

「え?あ…うん。まぁ普通」

「やっぱ緊張した?」

「まぁね…」

「その会社が第一希望なんだろ?
来年の本番…」

「…うん……」

「………。」

心ここに在らずで生返事の俺に
会話が繋がらず智くんも黙り込む。


松本さんの話しが余りにも衝撃的だったためか
面接を受けた事が遠い昔の事みたいに感じられた。

面接の事も…
就職の事も…

今は何も考えられなかった。

そんな事はどうでもいい…


それよりも今は…