朝の光がカーテンの隙間から洩れて

「翔くん…」

智くんがカーテンと窓を開けると
朝の爽やかな空気が部屋を駆け抜けていく。


あぁ…そうだ…

俺、引っ越しして
智くんと一緒に暮らし始めたんだ…


「翔くん…朝だよ…」

耳元で智くんの優しい声。

「…ん…う…ん……」

その声をずっと聞いていたくて
わざと布団に潜り込んで背を向けた。

そんな俺を智くんが ゆらゆらと揺すって

「ほら…翔くん…遅刻しちゃうよ…?」

布団から出ている耳に智くんの息が掛かる。

「じゃぁ…おはようのキス…してよ…」

少し口を尖らせて言うと

「仕方ないなぁ~…」

智くんが布団を引っ張って、ほんの少しずらすと
俺の頬に柔らかい感触…

「…違うよ…ちゃんとしてよ…
…じゃないと起きれない…」

上を向いて目を瞑ったまま
智くんの口唇を待っていると…



ガラッ!

大きな音を立ててガラス戸が開いて

「翔くん!!!遅刻するからっ!
翔くんがパンを焼いてくれんじゃないのっ!
もぉっ!何回呼べば起きるんだよっ!」

智くんに大声で捲し立てられて跳び起きた。


……なんだ…夢か…

ボンヤリとした頭で幸せな夢の余韻に浸っていると

「翔くんっ!もぉ起こさないからね!」

ピシャッ!

智くんが冷たく戸を閉めた。






ダイニングテーブルで向かい合って
ちょっと焦げたトーストを齧る。

テーブルの上には智くんが焼いてくれた
ベーコンエッグ…


上目遣いで向かいに座っている智くんを見ると
ジロリと睨まれた。

「…ご…ごめんね?」

「………。」

「昨日は引っ越しで疲れちゃったからさ…
明日はちゃんと起きれるから!」

口をへの字にした智くんが

「ホントに?…絶対?」

ぜ、絶対と言われると…

「た…ぶん…」

「多分?!」

「あ、いや…起きます!絶対起きます!」

テーブルに身を乗り出して必死の形相の俺に
智くんが堪えきれずにプッと吹き出した。

「ははは…いいよ。起こしてあげるから。
でも三回までだからね?!」


さ、智く~ん♡