「じゃぁサッサと片付けちゃおうよ」

翔くんの顔がパッと輝いて

「うん!ありがとう!」




「あ…これ…」

色んな物が詰め込まれた段ボール箱を開けると
一番上には智くんのお母さんが作ってくれたバッグ。

「本当に持ってたんだ…」

智くんが俺の手元を見て呟いた。

「持ってたよ。俺…本当に嬉しかったんだもん…
今も使ってるから…」

「マジか!まさか持って歩いてないよな?」

「ははは…流石にそりゃねーわ…
でも…本棚の横にぶら下げて郵便物とかを入れてんだ…
大きい外ポケットもあるから便利なんだよね」

「ホントだ…
俺のは外ポッケが小さくてさ…
母ちゃんに文句言って、後から付けて貰ったんだ」

「じゃぁ智くんの改良型だったって事か…」

二人でバッグを挟んで笑い合った後
以前と同じように本棚につけたフックに引っ掛けた。


凄い荷物だと思ったけど
二人で片付ければ、あっという間で
組み立て途中で放置されていたベッドを組み立てて
元々あった本棚に、同じように本を並べて
段ボール箱と衣装ケースを押入れに入れたら
綺麗さっぱりと片付いた。



「スゲぇ!智くんに手伝って貰ったら
あっという間じゃん!」

さっきまで埋没していたダイニングテーブルで

「引っ越しおめでと~」

「お疲れ様~」

缶ビール…もとい!発泡酒で乾杯をする。

「翔くん…メシは作れない
片づけは苦手って言ったら…
俺…嫌な予感しかしないけど…?」

俺にジロリと睨まれた翔くんが必死の形相で

「が、頑張るからっ!
今までは一人だったからさ…
でもこれからはちゃんとやるからっ!」

あたふたと言い訳をしている翔くんが可笑しくて
声を上げて笑うと、翔くんも嬉しそうに
「えへへ…」と笑った。

「まぁ…追々な…
そんなに無理する事は無いからさ…
出来る方がやればいいんだし」

「うん…でも頑張るよ。
智くんの負担になりたくないからさ…」

「そっか…」

無理して欲しくはないけど
翔くんのその気持ちが嬉しかった。