電気が煌々とついたダイニングキッチンには…
誰も居ない。


でも!何これっ!

あちらこちらに うず高く積み上げられた本と
段ボールの山!

翔くん…荷物少ないって言ってなかったっけ?

足の踏み場もなくなっているダイニングキッチンを
ジャンプしながら通り抜けて
開けっ放しの翔くんの部屋を覗くと
部屋の中もダイニングキッチン並みに
散らかり放題。

「翔くん?」

声を掛けると荷物に埋もれた翔くんが

「あ!智くん!帰ってきてたんだ!
おかえり~…ごめんね、気づかなくて…」

「いや…いいけど…どうしたの?これ…」

頭にタオルを被った翔くんが
情けなく眉毛を下げて

「俺…片付けが苦手でさ…
もぉどうしたらいいのか分からなくなっちゃって…」

「どうしたらって…
だって、あのボロいアパートに
全部収まってたんだろ?」

「うん…そのはずなんだけど…」

そのはず…って…

部屋の中をグルっと見渡した後
翔くんを見ると、途方に暮れて肩を落としている。

翔くん…頭いいはずなのに
こーゆーのは苦手なんだ…
考えてみたらボロいアパートも
床に本が積み上げられていたりして
結構散らかっていたもんな…

普段はあんなにキラキラしてて
カッコいい翔くんが何だか情けなくて…
早速、今まで知らなかった新しい翔くんを
見つけたみたいで嬉しくなる。

「俺も手伝うから片付けちゃおうよ!
ごめんな?この前の俺の引っ越しの時は
翔くんに手伝って貰ったのに」

「そんな…智くんは仕事だって
分かっていたんだし…
今日、無理矢理引っ越した来たのは
俺の勝手なんだからさ」