あ~~~…すっかり遅くなっちゃった!

松本さん、話しの展開が早過ぎんだよっ!
もう一号店のオープン日程が決まっただなんて…

今日は朝一で打ち合わせだって言うから
午前中で終わって、一緒に昼飯を食ったとしても
午後には帰れると思ったのに…

午後からは一号店を出店する予定の
空き店舗を見に行って具体的な話になった。


もうすっかり日も傾いて
オレンジ色の空に
遠く山の稜線がくっきりと浮かび上がっている。


翔くん、一人で大丈夫だったかな?


まだ俺も引っ越して間もないから
何となくしっくりこない駅前通りを抜けて
帰り道を小走りに急ぐ。


テストが終わった翌日に引っ越すと言う翔くんに
その日は打ち合わせが入ってて
手伝えないから別の日に…って言ったのに

「俺は本くらいしか無いから一人でも大丈夫だよ。
智くんは仕事なんだから俺の事は気にしなくていいから」

「でも…ベッドもあんだろ?」

「ベッドなんてパイプベッドだからバラせば軽いし…
冷蔵庫はニノに貰った大きいのがあるから
コレは要らないだろ?
置いていけばココを解体する時に
一緒に処分してくれるって言うからさ
荷物なんて大して無いよ」

「そっか…でも来週だったら手伝えるのに…
そんなに急がなくても大丈夫じゃないの?」

「そりゃそうだけどさ…
でも…」

言い淀んでいる翔くんが上目遣いで
俺を見た後、視線を外して

「でもさ……俺も早く引っ越したいし…」

恥ずかしそうに小さく呟くから
何だか胸がキュッとなった。