「大野くん、一度私の診療所にも遊びに来て下さい。
自然に囲まれたいい所です。
今の季節は山で山菜を採って
海で釣りをして…
最高の季節ですよ」

「へぇ~いいですね!
釣りかぁ~…子供の頃は川で釣りをしてたけど
海釣りも楽しそうですね」

「磯釣りは気軽に出来るからね。
今の季節ならシマアジとかイサキかな…
真鯛も釣れますよ」

「磯でですか?それは凄いなぁ~」

近くのファミレスで
俺をそっちのけで盛り上がってる二人。

「いや~息子が一人増えたみたいだ!
暫く泊まって海や山の絵を描くのもいいかもしれない。
田舎の家だから無駄に広くて空いてる部屋もあるし」

おいおい…
盛り上がり過ぎだろ…

智くんを肘で小突いて

「話し半分でいいから…」

小声で耳打ちをすると

「なんで?楽しいじゃん。
いいなぁ~晴耕雨読って感じでさ…
俺も田舎暮らししようかなぁ~…」

おぃ!
それじゃぁ俺はどうなるんだよ!



智くんとひとしきり盛り上がった親父を
ファミレスの駐車場で見送った。

診療所は元院長に頼んできたと言うから
泊まって行けば…と言ったら

「なぁに、夜中の方が道が空いてるから
今のうちに帰った方がいいだろう。
着いたら午前の診察はオヤッさんに任せて
ひと眠りするよ。
それに…あの狭いアパートのどこに寝るんだ。
お前とシングルベッドで一緒に寝るのだけは勘弁だ。
昔からお前のいびきは…」

最後に憎まれ口をたたいて
片道4時間の道のりを帰って行った。