「許してくれたんじゃない…
私の力など関係ないと…
人知の及ばない事もあると教えてくれました。
今まで何人もの患者さんの命を救ってきた。
貴方のお父さんも私が救えたはずだったのに…
そう思っていました。

でも…それは違うと…

確かにそれまでの私は驕っていたのかもしれないと
そう気づかせてくれました」

親父さんが俺の顔を見て微笑むと

「気持ちが軽くなりました…
そして謙虚な気持ちで患者さんと向き合おうと…
そう思う事が出来るようになりました。
医者として…人として…
貴方のお母さんには感謝しています。

そして…
改めて貴方にお詫びしたい。
貴方のお父さんを死なせずに済んだかもしれない…
貴方のお母さんから叱られたのに
懲りない奴だと思われるかもしれませんが
医者としてのプライドもあるのでね。
命を助けることなんて出来ないって思ったら
医者などやってられませんから…」

小さく笑うと顔を引き締めて

「本当に申し訳ない…」

深々と頭を下げた。

「そんな…止めて下さい…
母ちゃんの言う通りです。
誰のせいでも無かったんです…
だから誰も恨んでなんかいませんから」


「どうもありがとう」

ホッとして笑った親父さんの顔と
翔くんの笑顔が重なった。

「翔には私から話しをするつもりです。
今日、私の話しを聞いて
翔とこれからも友達でいて頂けるのか…
じっくり考えて頂いて…
この書類は一旦預からせて頂いてもよろしいですか?
もしそれでもいいと仰って頂けるんでしたら
判を押して郵送させて頂きますので…」

翔くんの親父さんが書類を封筒に入れようとしたところで

「あの…」

親父さんの手が止まって俺の顔を見る。

「翔くんには…言わないで貰ってもいいですか?」