「ただいま~」


………。


ん?…まだ帰ってない?


ンな訳ないか…
こんだけあっちもこっちも電気点いてんだから
帰ってきてるよね?


「翔く~ん…?」

靴を脱ぎながら奥に向かって声を掛ける。


・・・・・・・・・。

あれ?

いつもだったら飯を食っていようが
酔っぱらっていようが
転寝してようが
シャワーを浴びていようが
(これはちょっと困る!廊下までビチョビチョだし)

「智くぅ~ん♡お帰り~♪」

って出迎えてくれるのに…


電気点けっぱなしで出掛けちゃった…なんて事ないよね?

うん!翔くんの靴も有るし。


リビングのドアを開けると目に飛び込んできたのは
テーブルの周りに散らかった金、銀、色とりどりの紙くずと
ソファーの背もたれ側を向いて寝そべっている翔くんのお尻♡

翔くんの身長よりも少し狭いソファーに
膝を折り曲げて寝そべってるから
グレーのスウェットのお尻がプクっとしてて可愛い。


それにしても…何これ?

散らばっている紙包みは…チョコ?
あ…下に箱が転がってる。

「翔くん、ただいま!」

「………。」


ふぅ~~~ん…なるほどね~…

そーゆー事か…

ソファーの後ろ側に回って翔くんの顔を見ようと思ったら
座面と背もたれの間にギュッと顔を押し付けて
俺の視線から逃げようとしてる。

「翔くん…どうしたの?」

「………。」

「このチョコ…俺にくれるつもりだったんじゃないの?」

「………。」

「もしかして全部食べちゃった?」

「………。」

あ~ぁ…

まぁ…翔くんの気持ちも分かるけど…

翔くんの肩に触れると避ける様にピクッと身体を引いた。

「…仕方ないじゃん…仕事なんだから…
好きでやった訳じゃないし…」

気にせずに肩に手を置く。

「 …でも…楽しそうだった… 」

おっ!喋った…

「楽しい訳ないじゃん!」

「 ミサさん…なんて言っちゃって… 」

「だから仕事だって…」

「 呼び捨てにしてたし… 」

ウジウジしてる翔くんを見下ろしてため息をつく。

まぁアレが放送されたら、こーなる事は想像できたけど…
それにしても分りやすいダダのこね方…
子供かよっ!

さて…ツンでいくか…デレでいくか…

今日はダメージがデカそうだからツンだと泣くか?



「翔くんと…一緒だったら良かったのにな…
昔のさ…合宿思い出したよ。
嵐、みんなで行ってさ…楽しかったよね~」

翔くんがほんの少し顔を浮かせた。

「最高だったなぁ~アレ…
俺、あの時の事思い出したら自然に笑えちゃってさ…
やっぱり女優さんとじゃなくて翔くんと一緒に行きたかったなぁ~」

「 …ほんと? 」

「当たり前じゃん!女優さんだよ?
一緒に居たって気は遣うし、楽しそうにしなくちゃいけないし…
大変だよ!楽しい訳ないじゃん!」

「 楽しく…なかったの? 」

「やってる時は楽しいよ?
丸太渡るのも、ターザンロープも一人だし。
この前まで忍者だったから楽勝なんだけどさ
ディレクターに恐々やってくれって言われたから」

「そーなの?
ちょっとダサッて感じで智くんらしくないな…
っては思ってたけど…」

「あんなの楽勝だよ。翔くんなら分かるだろ?」

「うん…智くんだったらもっと軽々出来るはずなのに!
って思って見てた!」

「やっぱり翔くんは分かってるよなぁ~」

「へへへ…」

翔くんが照れくさそうに笑って口元を指先で掻いた。

お…機嫌がいい時の翔くんの癖…

やっとご機嫌直ったか…


「なんでチョコ食べちゃったの?」

意地悪く言うと、また口を尖らせて

「だって…智くんがさ…」

「ヤキモチ…妬いたの?」

「………。」

「で…やけ食い?」

「………。」

「バカだなぁ…翔くんは…
俺は翔くんだけだよ?」

さっきまで尖っていた口が
緩みそうになるのを一生懸命我慢して
わざと不機嫌そうに

「ちょっと嫌だった…」

「うん。ごめんね」

俺が素直に謝ると

「俺も…ゴメン。…ホワイトデーのチョコ…食べちゃって…」

「チョコ…食べたかったな…
でもいいよ…翔くんがヤキモチ妬いてくれて嬉しいかったから…」

身体を屈めて翔くんの耳元で囁くと

「嬉しかっただなんて…意地悪だな…」

また拗ねるからチュッて頬にキスをすると

「…明日また買って来るね…」

翔くんが俺の方を見て照れくさそうに笑った。

翔くんの紅い口唇をじっと見据えて

「いいよ…今、食べるから…」

そっと口づける…

「甘…い…何個食べた?」

「…12個…」

「なに味?」

「え?…ストロベリーと…」

「じゃぁ…1個目はストロベリーね…」

目を瞑って…

翔くんの中にストロベリーを探す…


「2個目は?」

「ミルク…」


ミルク…ね…


翔くんの口腔内で俺の舌が蠢くと
翔くんの顔がうっとりと色っぽくなる。

紅い口唇は赤みを増して舌がねっとりと絡みつく。

「3個目は?」

「……ビター…」

熱い吐息と共に小さく呟く…

翔くんの手が俺の首に絡みついてきて
ソファーに引きずり降ろされた。

熱くなる身体…
深くなる口づけ…

「4個目……」

翔くんの口唇が俺の顎の線を這って耳たぶを軽く食む。

「翔くん…ダメだよ…4個目は?」

「もぉ…いいじゃん…また明日食べれば…」

シャツを捲り上げようとする翔くんの手を掴んで

「ダメ…俺のチョコを食べた罰だから…」

「そんなに一遍に食べたら鼻血出るよ」

「それは翔くんだろ?」

「あ…そうか…」



俺の事が欲しくて…欲しくて…

焦れてる翔くんが見たいから…


んふふ…

まだまだ…許してなんかやらないよ…


「4個目は?」



「ラム…」


大きく息を吸って…耳元で

「ホントだ…ラムの香りがする……」




「智くん…やっぱり…意地悪だな…」


~Happy White Day~


☆*:.。. 終 .。.:*☆