ザラッとした感触が俺の耳を撫でる…
 
何度も…
 
何度も…
 
 
「にゃぁ…」
(誰?)
 
え…?にゃぁ?
あ…俺…今度は猫だ…
また智くんに怒られちゃう…

「あ…目が覚めたみたいですよ?」
 
「良かったね~生きてて」
 
「サトシが連れてきた時は死んでるのかと思ったよ」
 
「俺も…まだ生まれたばっかみたいだったし
てっきりダメかと思いましたよ…」
 
「…で?どうすんの?誰か飼える?カズは?」
 
「俺のマンションはペット禁止なんですよね~…
マーくんは…食べ物屋だから無理か…」
 
「じゃぁ…ジュン?」
 
「俺かぁ…まぁサトシが連れてきたんだしな…
一匹も二匹も変わんねぇか…」
 

一匹も二匹も…?
 
またザラッとした感触が耳元を撫でる。
 
薄く目を開けると人間が三人と…
俺の耳を舐める猫が一匹…
 
 
ん?猫?
 
(翔くん…気が付いた?)
 
(さ…としくん?)
 
(ははは…今度は二人とも猫だったな…)
 
(ホントだ~…智くんも猫になってる~)
 
近くに智くんを感じて…
嬉しくて喉が鳴る。

「なんかサトシのヤツ…
すっかり この子猫が気に入ったみたいだな…」
 
「サトシの嫁さん候補なんじゃないの?」
 
「え~…こいつもオスみたいですよ?」
 
「ははは…じゃぁダメだよ~」
 
人間たちの話しを聞いていると…

どうやら俺は智くんに助けられたらしい。
 
そしてこれからもここに?
 
ここで智くんと一緒に?
 
「にゃぁ…?」
(一緒にいられるの…?)
 
「にゃぁ!」
(そうみたいだよ!)
 
やっと…やっと智くんと一緒にいられるんだ!
嬉しくて智くんに抱きつこうとしたけど躰が思うように動かない。
 
「にゃぁ…」
(まだ無理しちゃダメだよ…ドブに落ちて死にかけてたんだから…)

「にゃ…?」
(智くんが助けてくれたんだね?)
 
「にゃん…」
(やっと見つけたのに、またすれ違うのかと思ったよ…)

智くんが付きっきりで介抱してくれたお陰で
俺はみるみる元気を取り戻した。
もう自由に外にだって出掛けられる。
 
 (翔くん…俺のとって置きの場所を教えてやるよ)
 
 (とって置き?どこ?)
 
(付いてくれば分かるって!)
 
智くんの後について陽だまりの中を歩く。
 

 
 
(ここでいつも昼寝してんだ~)
 
(智くんのお気に入りの場所?)
 
(そうそう!気持ちいいだろ?)
 
(ホントだ…気持ちよくて眠くなっちゃうよ…)
 
(俺も…ふぁ~…)
 
(ねぇ…智くんさぁ~…)
 
(ん~~~?)
 
(俺達いつになったら人間同士で出会えんのかな?)
 
(そうだなぁ~…でもさ…良くね?)
 
(良くね?って猫で?)
 
(こうやって一緒に日向ぼっこすんのも悪くねーじゃん?)
 
(そっかぁ~…それもそうだね…)
 
(…だろ?)
 

 
 

☆*:.。. 終 .。.:*☆