「まぁ…何か言ってくる人も、陰で言う人もいるかもしれませんが 私はお二人を応援しますよ。
櫻井先生が相当の覚悟の上で島に来たことをお聞きして逆に私は安心しました。
これで櫻井先生が島を去るという心配は無いですからね」

いたずらっぽく笑う校長の…その優しさが胸に沁みた。
世界中を敵に廻したとしても構わない…
智と一緒に居られるならどこに流れつこうとも
どんなに落ちぶれた暮らしになろうとも…

覚悟は出来ていた。

でも…
オッちゃんも…校長も…
理解してくれる人がいるという事が
こんなにも嬉しく心強いものなのか…
無意識のうちに頑なに構えていた俺の心が解れていく。


「なるほどね…そういう事だったんですね…」

俺たち二人を交互に見た校長が笑いながら

「先日…組合長と飲んだ時に やけに昔話をするんですよ。
普段は一切話さない奥さんとの馴れ初めやら…
私の話しも何度も繰り返し聞いてきて…
何でだろう…って その時は不思議に思いましたが
きっと貴方がたの事を心配して私を牽制してたんでしょうね」

「オッちゃんが…?」

思わず智と顔を見合わせる。

照れ屋のオッちゃんがそんな事を…
普段だったら口が裂けても言わないような事を俺達のために…
赤の他人の俺達のために…
オッちゃんのその気持ちに…頭が下がった。

「もしこの島で私たちの事が拒まれることがあったら
この島も…教師の道を捨てる事も覚悟の上でした。
でも…この島は私達を繋いでくれた島なんです。
この島で二人で堂々と胸を張って生きていきたいと…
そのための努力は惜しまないつもりです。
教師として、まだ未熟な私ですがこれからも
ご指導よろしくお願いします」

頭をさげると俺も熱いものがこみ上げてきて
隣の智の手をギュッと握った。