「櫻井先生の その姿勢が…お人柄が子供達に伝わって
子供達との信頼関係が築かれていると言う事です。
子供達に信頼されている櫻井先生が学校を去る…
そんな事になってしまったら子供達は大騒ぎですよ。
そうなると困るのは親御さん達ですからね。
事を荒立てる人なんて居やしませんよ」


「ありがとうございます」

横で頭をさげる翔をボンヤリ見ていた。

校長の話を聞いて…
目の前の霧が晴れていくような気がした。

翔と暮らすようになってから気づかないふりをしてきた。
俺達の関係がいつか表ざたになった時の事を…

大騒ぎになって…
傷ついて…
傷つけて…
そして壊れていく…

気づかないふりをして…
心の奥底に蓋をして…

堂々と生きて行こう…って翔に言われた時
「うん」って頷いたけど…
ずっと…バレなきゃいいのにって思ってた。
ずっと…ずっと怯えていた。

でも翔は違ってたんだ。
俺達の関係を隠して生きていくには
この島は狭すぎるという事も…
嘘をついて…隠し通したままでは
本当の意味の幸せは訪れないって事も…

翔は全部分かっていて島に来たって言ってた。
覚悟を決めて
俺と一緒に歩く道を選んでくれたんだ。

翔がしっかり前を向いてくれていたから
校長も子供達も翔の味方になってくれる。
翔が島で生きるために頑張ってくれていたから
道が拓けたんだ。