俺達を交互に見た校長が
「なるほどね…そういう事ですか…変だなって思ってたんですよ…
組合長がやけに昔話をするから…ほぉほぉ…そういう事ですか…」
一人で納得した様に頷くと翔の顔を見て
「櫻井先生の話しは分かりました。
そういう事でしたら先方には
櫻井先生にはもう決まった方がいらっしゃると
お伝えしてお断りしましょう」
え…?
そんなに簡単に?
思わず耳を疑った。
呆気にとられて翔の顔を見ると隣の翔は涼しい顔をして
「ご迷惑をおかけして申し訳有りませんがよろしくお願いします」
深々と頭を下げる。
「いやいや…私の勝手なお節介だったんですから…
昨年度から櫻井先生を見てきて、私は櫻井先生惚れ込みましてね…
先生の気が変わって東京に戻られては…と心配しておりました。
今回の見合い話は…言わば櫻井先生をこの学校に繋ぎとめるためみたいなもんです。
…おっと…そんな事を言ったら友人にも、そのお嬢さんにも叱られてしますがね」
はっはっは…と校長が俺の心配をよそに陽気に笑う。
じゃぁ…翔はこのまま…この学校に居てもいいって事なのかな?
辞めなくてもいいって事なのかな?
でも…良からぬ噂って…この前言ってたし…
ずっと心の中の澱となって溜まっている あの事…
今この機会に…ちゃんと聞かなきゃ…だよな?