小山先生と受付をしてくれた医師に三人で
頭を下げて、病院を後にした。

外に出ると翔が当たり前の様に身をかがめて

「ほら!」

俺を背負おうとするから

「大丈夫だよ!もぉ縫ったから傷も開かないし…
自分で歩けるから」

少し後ずさりすると
翔が振り向いて下から俺の顔を覗き込んで

「だって…顔が真っ青だよ?
恥ずかしがってる場合じゃないだろ?」

「10分くらいなんだから…歩けるよ」

翔を追い越して歩き出す。

何か言いたげな翔を背中で感じながら
黙々と歩く。

商店街を抜けた先でオッちゃんが

「じゃぁ無理すんなよ。
何か有ったら夜中でもいいから電話しろ。
後でオッカァがメシ持ってくから…」

「ありがとう…ごめん…」

手伝うつもりがすっかり迷惑を掛けちゃって…
オッちゃんに謝ると

「気にすんな…」

オッちゃんが俺の肩をポンポンと叩くと
言おうか言うまいか…と口を開きかけて
「…まぁいいか…」と独り言を呟くと

「じゃぁな…」

翔に手を挙げて背中を向けた。



オッちゃんを見送って、家への坂道を上る。

俺の少し後ろを…
青い顔をした智が一歩一歩、踏みしめる様に
肩で息をして歩いている。

「智…ほら…」

手を差し伸べると、一瞬ビックリしたような顔をして
俺の手を見た後、顔を逸らして

「大丈夫…だから」

「でも…」

「大丈夫だってばっ!
誰が見てるか分かんないだろ!」

「誰が…って…」

智の剣幕に驚いて一瞬立ち尽くす俺を
拒絶する様に追い抜いて…
ズンズン上っていった。