嬉しそうに笑っている翔の横で…
心も身体も凍り付いていた。


「恋人同士みたい…」


頭の中で…
その言葉がぐゎんぐゎんと大きく鳴り響く…

やっぱり子供達の間でも?

今はまだ…
仲のいい幼馴染で済むのかもしれない。
ねじ曲がった噂が広まって
翔が傷つく前に…

子供達と一緒にサッカーをしている翔や
休み時間に子供達に囲まれている翔…
子供達はみんな翔の事が大好きで
見かけると遠くからでも「櫻井先生~っ!」と
手を振って来る。

その子供達の目が…

穢れたものを見る様に冷たく光って
翔が…何より大好きな子供達に拒絶されたら…

暗い闇の中で光る沢山の目…
好奇と…
嫌悪と…
憎悪と…


翔をそんな目に晒すわけにはいかないんだ。


「智…大丈夫?顔が真っ青だよ」

一言も発せずに俯く俺に気づいて
翔が優しく声を掛けて、椅子に座るように促してくれる。

「じゃぁ…痛み止めと化膿止めの薬を出しますから。
三日間くらいは消毒に通って貰おうかな…
抜糸は…一週間後くらいに様子を見てですね。
今夜は熱が出るかもしれないけど…
まぁそんなに高くはないと思うから…」

休日だからと、一日分の薬を貰って病院を出た。

「糸が抜けるまではウチのオッカァに
メシを届けさせるから…
まぁ…糸が抜けても暫く漁は休みだな」

包帯をグルグル巻きにされた智の左腕を見る。

確かにこれじゃぁフライパンだって持てやしない。
今まで散々智に甘えてきたんだから、こんな時くらいは俺が…

「智の怪我が治るまで俺が作るよ…」

オッちゃんが呆れた顔で俺を見て

「バカか…お前まで包丁で指を落とした…
なんて事になったらどーすんだよ。
慣れない事なんてするもんじゃねぇ」