「智!大丈夫?」

そばに駆け寄ると

「大丈夫だよ…翔は大袈裟なんだよ…」

智が力なく笑った。

「あぁやっぱり?組合長の船に乗ってる人か~
どっかで見た事あると思ってたんだ…
って事は図工の大野先生か…」

小山先生が嬉しそうにオッちゃんに向かって話しかける。

漁協の組合長をしているオッちゃんは顔が広い。
海に携わる人が多い島では漁協の組合長と言ったら
町長以上の影響力を持っていると言っても過言ではない。

オッちゃんも親しげに

「小山先生でしたか…
休みのところすみません。
すっかり世話になっちまって…」

「いやいや…
休みって言っても遊びに行くところもないし…
午後から港に釣りに行こうかって思ってたくらいだから。
じゃぁ…こちらが櫻井先生?」

えっ?俺?

小山先生が俺を見て微笑みながら

「ウチの甥っ子が五年生なんです。
いつも櫻井先生の話しをしてますよ。
凄い人気ですよ…櫻井先生」

面と向かって褒められると何だか…
照れくさくて緩んだ口元を人差し指で掻く。

「甥っ子が…慶一郎って言うんですけどね
櫻井先生と大野先生が幼馴染で親友だって言うんで
俺もシゲと先生達みたいにずっと親友なんだ!って…
まるで恋人同士みたいに、いつも二人でくっついてますよ」

ケイイチロウ…小山?慶一郎…

あぁ…五年のケイか…
礼儀正しくて真面目で勉強もスポーツも万能だけど
ちょっと天然って言うか…
嫌味の無い性格が学校でも人気の彼と…
いつもじゃれ合っている恥ずかしがり屋のシゲ…

目の前の小山先生を改めて見ると…
人懐っこい顔で笑っている小山先生が…
あぁ…確かに目元が少し似ている。