坂道を駆け下りて港の方へ右に曲がる。
商店街の手前にその病院はあった。
日曜日だから当然ながら入り口のドアは鍵が掛かっている。
どこだ?どっから入れば…
そうか!面会者の入り口に行けば…
と、思った時に『救急』のプレートの文字が目に飛び込んできた。
プレートの下にはインターホン。
インターホンを押す。
応答が待ちきれずに2回…3回と押すと
プッ…と繋がる小さな音がして
「は~い?」
くぐもった声が聞こえた。
「あの!怪我人なんです!開けてください!
怪我人…早くっ!早く開けて…」
プッ…切れる音がした。
早く…早くしないと智が…
イライラとインターホンを見つめていると
横の通用口が開いた。
白衣を着た年配の医者が出てきて
「じゃぁ怪我人…こっち来て」
怪我人…
「あ…俺じゃなくて…えっと、船に乗ってて
怪我したって連絡が入って…今、港に向かってます」
「ありゃ…アンタじゃないの?
じゃぁ丁度良かった。
外科の先生は今日、休みだから…
今から来てもらうから本人連れてきてよ。
怪我って…どんくらい?」
「どんくらいって…詳しく聞く前に切れちゃったから…」
「なに?それも分かんないの?仕方ないなぁ…
担架いるかなぁ…とりあえず担架がいる様なら電話して。
それまでに先生呼んでくるから」
返事もそこそに病院を飛び出して港へ走る。