「智が怪我したっ!直ぐに病院に連絡しろっ!」

智が…怪我……?

思いがけない事に 俄かに頭が回らない。

「翔っ!聞いてんのかっ?
今、港に向かってるから
病院に診察してくれる様に連絡しろっ!」

それだけ言うと電話は一方的に切れた。


智が…怪我…?

智が怪我…

智が…



「…っ!!!」

オッちゃんの言葉の意味を脳がキャッチした途端に
俺の心臓がギュッと縮まって指先が痺れた。

で、電話…
病院に電話しなきゃ…

どこ?

病院は港のそばの商店街の近くにあった。

場所は分かる。

でも…
島に来てから病院なんて行った事ないし…
スマホの電話帳を見たって、登録なんてしてる訳ない。

たしか…
智がゴミの出し方とかが載ってる
『暮らしの便利帳』とか言う広報紙を
とってあったはず…
そこに載ってるか?

台所の食器が入っている棚の下の籠の中を探ると

「あ!有った…」

目当ての冊子を見つけてページを捲る。

どこだ?…ここじゃない…

震える指先と焦る気持ちで、なかなか目当ての情報まで
たどり着かない…


智…

居てもたっても居られなくて
スマホと財布、鍵を掴んで家を飛び出した。


息を切らして走る。

大きくはないが入院設備も備えているから
病院まで行けば…誰か居るはず。