「まったく…
智はのぼせやすいんだから気をつけろって
さっきも言ったよな?」

「…ごめん……」

気持ちが落ち着くまで…
涙が収まるまで…
そう思っていたら…
いつまでも経っても出られなくなった…

立ち眩みを起こして洗面所で
しゃがみこんでいたら心配した翔が
また様子を見に来て…

「智っ!」

抱きかかえられてベッドに寝かされた。

冷えたタオルを額に載せられて
翔が団扇で扇いでくれている。

「ほら…水飲んで…」

上半身を抱えて少し身体を起こしてくれて
水を飲ませてくれようとするから

「水くらい自分で飲めるよ…」

翔の手からペットボトルを受け取って
冷たい水を口に含んで
ゆっくりと嚥下する。

「ありがと…」

三口飲んで翔に手渡すと
ゆっくりとベッドに身体を沈める。

翔が傍に置いた氷が浮いた洗面器に
タオルを浸して固く絞ると
俺の額に載せてくれて…軽く押さえると
また団扇で風を送ってくれる。

頭の芯が重たいけど
冷たいタオルと
柔らかい風が
火照った身体に気持ちよくて…
意識が遠のいていった…


薄れていく意識の中で
優しく俺の髪を撫でながら

「智…愛してる…よ……
ゆっくりおやすみ…」

柔らかいものが瞼に触れて
翔の声が聞こえた様に思えたのは…


夢…だったのかな……