「翔くんっ?!」

「はい…」

もう怒られる事を想定して
耳も尻尾も垂れ下がった体の翔くんが
上目遣いに俺を見る。

「さっきのアレは何?
また熱が上がったのかと思ったじゃん!」

「だって……」

「だって…何っ?!!!」

「だって…熱が下がったって言ったら
智くん…来てくれないかもしれないから…」

そんなこったろうと思ったよ…
呆れて…でも、そんな翔くんが可愛くて
こみ上げてくる笑いをこらえていると

言い訳をしている翔くんが
垂れ下がった尻尾の先を小さく振って

「だって…起きたら居ないしさ…」

「仕事だし…」

「分かってるけどさ…」

「メモに帰りに寄るからって書いたろ?」

「そうだけどさ…」

「嘘だと思った…?」

「嘘って言うか…
熱が下がったって言ったら来てくれないかもって…
どうしても…会いたかったから…」

いつもはカッコよくって頼りになる翔くんが
俺に甘えてくれるのが嬉しくて

「バカだなぁ…
そばにいるって言ったろ?」

ソファーから降りてフワッと抱きしめる。



あ……

翔くんが声にならない声をあげて
一瞬身体を硬くした後…
俺の背中に腕を回すと強く抱きしめる。

「ホントに?」

尻尾が上がってパタパタ振ってる

「…うん…
だって…ショーがガッカリすんだろ?」

「え〜…ショーのため〜?!」

あ…耳が下がった…

「ふふふ…翔くんと…俺のため…」

翔くんの首に腕を回すと
翔くんの視線が俺の唇を捉えて…
俺の視線は翔くんの…

同じタイミングで引き寄せられて…

口付ける。



お互いの唇の感触を確かめるように
小さなキスを繰り返して
やがて熱く…深く…

「智くん…愛してる…
ずっと前から…
言いたかったけど…言えなかった…」

俺も…

翔くんも同じ気持ちを抱えているのは
なんとなく気づいていたけど
触れちゃいけないような気がしていた…

未来から来たショーが
俺達に未来をくれた。

俺達の先にショーが居て
その先にはショーとサトの子供…

俺達の想いは決して無意味なんかじゃない…