「さて続いての曲はこちらの皆さん…」

眩しいライトの下に立つ翔ちゃん…

さっきまでの苦しげな翔ちゃんは
俺たち以外 誰も知らない…



「5分たったよ…」

遠慮がちに大野さんが声をかけると
パチっと目を開けて

「…ん。ありがと」

ムクッと起き上がると
心配そうに見ている俺たちに

「ちょっと楽になったよ。
心配かけて悪かったな…」

首筋に薄っすらと汗が光って
薬が効き始めているのが分かる。

確かにさっきよりは顔つきが
シャッキリしているみたいだ。

俺が差し出した濡れタオルで汗を拭く。
手早く着替えてメイクを直すと
何事も無かった様な顔になって
心配して付いて行こうとした
大野さんに「大丈夫…」と微笑んで出て行った。



「凄いな…ショーの薬…魔法みたいだ…」

楽屋に備え付けてあるテレビで翔ちゃんを見ながら
松潤が独り言の様に呟く。


いや…そこまでは効きはしない…はず。
確かにこの時代の薬よりは遥かに効き目があるとは思うけど
一般的に手に入る薬剤だから そんなに強くはない…

今は俺の薬と翔ちゃんの気力が熱に勝っているだけ…
その場しのぎみたいなもんだと思う…
時間稼ぎが生放送終了まで持つかどうか…

司会で喋っているだけなら何とかなるかもしれないけど…
まだこれからもリリックビンゴのコーナーや
番組の最後には嵐のスペシャルライブ…

さっきまでの翔ちゃんが頭をよぎる。

あんな状態で

踊れるわけない…