「デートなんて…
もぉ ここ何年もしてないです」

「え?…モテモテなのに?」

ビックリして少し声が大きくなる。

そんな俺に櫻井さんが苦笑い…って感じに軽く笑って

「全然モテモテなんかじゃないですよ…」




運命の人がいるからって…
いつか城島さんが言ってたっけ…

まだ…その運命の人に…巡り合ってないって事なのかな…

「モテモテですよ。この前は大騒ぎだったんですから。
櫻井さんが工場に来た時…
次の日に出勤したら櫻井さんの話題で持ちきりでしたよ!
食堂のオバちゃんまで…」

「ははは…物珍しかっただけですよ。
ここじゃぁ中身が知れてるので 誰も騒いでなんてくれません。
クリスマスも一人だったし…
バレンタインデーも義理ばかりで本命チョコは一つだけです」

本命……一つ…って…

やっぱ居るんじゃん…彼女…


「ははは…本命…なんて見えを張りましたけど
本命チョコは…従兄弟ン家の子供です。
あと20年たったら俺のヨメさんになってくれるらしいです」

なんだ……従兄弟の子供か…

沈みかけた気持ちが急上昇して肩の力が抜けた。

「俺も毎年クリぼっちだからなぁ…」

「クリぼっちかぁ…
まぁ…俺もクリぼっちと言えばクリぼっちだったけど…
でもまぁ去年は あら……あ…いや……」

言いかけたのに…慌てた様に口をつぐむ

去年は あら?…ん?…なに?「あら…」って…


俺が次の言葉を待って黙っていると
いつもとは別人の様にオドオドとした声で


「………あの……笑わない…ですか?」