「翔ちゃん…ごめんね。待たせちゃって…」

島から帰ってきて三日後
ホテルのラウンジで久しぶりに彼女と会った。

自分と続けたい気持ちがあるなら一カ月後に
会いに来て欲しいと言われて…

あの時は…やっぱり会いに行くんだろうな…って思っていた。
文句なしに良い子だし…俺なりに好きだった。
いつか…
結婚する事になるとしたら彼女とするんだろうな…
漠然とそう思っていた。

「俺こそ…呼び出しちゃって…」

なんて…切り出したら…
色々考えてはきたが、本人を目の前に
何を言っても空々しく感じられる。

なかなか切り出せない俺に

「忙しいみたいだね」

あの頃と変わらない口調で自然に話しかけてくれる。

「うん。なんかバダバタしちゃって…」

「潤君がね…」

え…?

「なんか…翔ちゃんが変わったって…」

「俺が?」

「うん。…好きな人…出来たんでしょ?」

あ…

「…ごめん」

「そっか…」

彼女がほんの少し俯いて…
顔を上げた時はいつもの笑顔だった。

「良かった…」

「え…?」

「翔ちゃんが…あのまんまの翔ちゃんで
一ヶ月後に、さぁ会いに来たよって言われたら
どうしよう…って思ってた。
それじゃぁ何も変わらないから…」

「俺…あの時は何を言われてんのか分かんなかった…
浮気した訳じゃないし…って。
でも…今なら分かる気がする…」