「すげ~~~!」

智の家の台所で俺の持っていた包みを開けると
刺身の盛り合わせだった。

智が得意げに

「昨日、俺が獲ってオバちゃんに頼んどいたんだ。
いつもは自分でやるけどさ…せっかく翔が来るのに
料理してる時間が勿体無いから…」

男二人掛かりで持って帰ってきたのはオバちゃんが
作ってくれた物凄いご馳走の数々。

「オバちゃん、えらく張り切ったな…
翔…二日かけても食い切んないぞ!」

陽は傾きかけているけど、窓の外の海が茜色に染まるまでには
まだ少し時間がある。
とりあえず刺身を冷蔵庫にしまって…

「あ…やべ…醤油が無かった…
そこの酒屋まで行ってくるからちょっと待ってて!
冷蔵庫にビールあるし、風呂が沸いたら入っちゃっていいから」

智が財布をつかんで飛び出していった。

智の居ない部屋に一人残されて…
なんとなく覗き見しているような落ち着かなさで
智の島での暮らしぶりを興味深く見る。

釣りの道具
珍しい貝殻
写真立てに…あの頃の智と俺…

写真立てを持って見入ってるとスマホが鳴った。

ん?智?

「なに?どうしたの?」

「あ…翔?ウィスキーとか飲む?
俺ン家、島焼酎とビールしかないからさ…」

「あ…俺、焼酎好きだから…
せっかく島に来たんだし、島の焼酎飲むよ」

「そっか…了解~!」

浮かれた様子が伝わってくる智からの電話を切って

あ…今の内にカケルに写メ送っとこ。

『今、島に来てるんだ。約束の写真送るよ』

送信…と。


~♬…~♬…~♬…

ん?

部屋の隅の机の辺りから…携帯の着信音?
智の携帯?
え?でも…今、智から電話来たよな?

机の上の雑誌をどかすとスマホが着信を告げて震えていた。

受信メール…『櫻井 翔』