一週間入院して、サトシくんと一緒に
俺のマンションに帰ってきた。

何事も無かったように
以前と同じ、穏やかな生活。

サトシくんが俺の為に朝食を作り
「ありがとう」と言ってサトシくんと食べる。
俺が微笑むと、サトシくんも微笑み返してくれる。
何も変わらない暖かい日常の中で…
俺とサトシくんの間が…
薄くて…
冷たい膜のようなもので遮られているように
感じているのは俺だけだろうか…

サトシくんの心に触れたくても
見えない何かが俺を阻む。

水の中に油の粒が浮いてるみたいに
交わらない…

こんなに近くに居るのに
凄く…遠く感じるんだ。



「今日、病院行ってくるよ。
レントゲン撮って上手くくっついてたら
コレ外すって。」

朝食を食べながら右手のギブスを振った。

「良かったね~やっと不便な生活から解放されるよね」

サトシくんが笑顔で答える。

そう…

そしてサトシくんも…俺から解放されるんだ。

お互いを傷付けて…
お互いに傷付いた…
傷を舐めあって暮らす生活が
長続きしないことに俺もサトシくんも
気付いていたんだ。

ギブスが外れたその日の夜…

来た時と同じように小さなバッグを
一つ持って、サトシくんは…
俺の家から出て行った。