「とりあえず…送ってくよ…」

ハンドルを握りエンジンをかける。
サトシくんのマンションの前で車を止めると、
サトシくんは、何か言いたげに俺を見て……
小さく「おやすみ…」とだけ呟いて車を降りた。

俺は…
サトシくんを振り返ることなく車をスタートさせた。


付き合うつもりはないって……
どう言う事なんだよ。
笑ってる俺をずっと見たいって……
それが付き合うって事じゃないのかよ。

俺だって…

確かにこんな感情に気付いたのは、つい最近だけど
今思えば、ずっと…ずっとサトシくんを見ていたんだ。

ずっと不思議だった。
ちょっと「いいな…」って感じた女の子と
いい感じになって…でも…そっから先に進めない。
進めないって言うか…進む気にならない…
女の子を可愛いな…って思うこともあるし
いつか結婚するなら…って思うこともある。

でも…なんて言うのかな…
誰と一緒にいても感じた事は無かった…
突き上げる様な感情。
その人を想うと身体中の血液が沸き立って
出口を求めてざわめくような…

そんなモンなのかなって…俺が恋愛に対して
淡白なだけなのかなって思ってた。

でも、気付いたんだ。
アナタを好きだと自覚した瞬間…

ずっと燻っていた種火に一瞬で火がついた。

俺だけを見て……
俺だけに笑って……
俺だけに触れて……
全て俺だけのものにしたい……


初めてなんだ……こんな…俺。