1989年春、1991年発売の次期小型テレビの企画会議で、はじめて音声合成を搭載することが決まった。
時刻を女性の声でお知らせしたり、タイマーで設定時刻になったら音でお知らせしたり。
お知らせ音の一つとして、遊び心で「バ〜〜ン!」という爆発音を入れることになった。
爆発音に同期して画面上にオンスクリーンで
BANG!
BANG!
BANG!
と文字も表示させることに決まった。
私はその音声合成の制御や画面設計を含む
全てのソフトウェアを担当していた。
遊び心満載の新モデルの開発設計に
ワクワクドキドキする充実した毎日だった。
二次試作もほぼ終わり、
マイコンのROMマスク手配をする直前だった。
1991年6月長崎県島原半島の普賢岳が爆発して大火砕流が発生して死者も出てしまった。
火山の爆発音ではなかったけれど、
この時期に「バ〜〜ン!」の爆発音や
「BANG!」のオンスクリーン表示はまずかろう
って事で、急遽何の面白みもないブザー音に変更され、オンスクリーン表示もなしとなった。
幻の
BANG!
しかたないけど、
やるせない。
音声合成のチップの中には
爆発音の「バ〜〜ン!」も搭載されているし、
オンスクリーン文字の
BANG!
も何時でも出せる準備はできていた。
でもそれは、決して
世に出ることのない仕様となった。