アレクサンドラ構文とか、アミラーゼ構文という構文があるそうです。AIに東大入試の問題を解かせ、東大に合格させるという東ロボ君プロジェクトを率いた国立情報研究機構の新井紀子教授が読解力のなさを問題提起したものです。文章を正しく読み取るスキルがあるかを測ることを目的とした問題は以下のとおりです。

わざわざ余分な説明をして迷わせるようにしてある意地悪な問題(文章)!そのためか、アレクサンドラ構文の正答率は中学生で38%、高校生で65%、アミラーゼ構文では、中学校で9%、高校生でも30%という正答率の低さです。ちなみに正解は前者はAlex、後者はデンプンです。
 

アレクサンドラ構文とか、アミラーゼ構文という言葉に出会ったので、今日は新井先生の嘆く読解力のなさの前に、誤解なく言いたいことを伝えられる文章を書くということを看護師を教育して仕様書を書かせてきた経験を踏まえて取り上げます。

 

誤解されない簡潔な文章を書き、読む方はそれを誤解なく理解することが大切です。特に、書かれた仕様を見てシステムを開発するの仕様書は最大の注意を払って誤解なく読み手に伝わるように書かなければなければなりません。

 

仕様書が出来が悪く、顧客の要求と作り手との認識の相違によって、期待したものと出来上がったものが違うという話はよく聞きます。私はそうならないよう、文章だけではなくPowerpointを使って画面イメージで仕様を書くように指導してきました。

処理の流れは画面遷移で現しますが、文章で書き表すことが難しいこのような動きのある仕様も、以下の様にすると現場の皆さんにも理解され、是非を判断してもらえます。

これは、画面中心設計という名前をつけた国鉄民営化直後のJRのシステム再構築をしていた頃からやってきた方法です。誤解なく理解してもらうための文章を書けるように努力しつつ、画で補うという方法です。

 

期待したものと出来上がったものが違うということを、分かりやすく紹介するものがあるので紹介します。木の枝にタイヤをつるした簡単なブランコ作って欲しいという、シンプルなのに理解してもらうことが難しい例を示すTree Swing Cartoonと呼ばれるものです。

しかし、その希望が作り手に伝わるまでの間に、伝え方/理解の仕方に相違が重なり、出来上がったものは希望していたものではありませんでした。いわゆる伝言ゲームのようなものです。

簡単に説明を書いておきましたが、人によって理解の仕方が千差万別であることが分かります。




この例は発注者から作り手まで全てがダメな極端な例ですが、仕様は思ったようには伝わらないものであることを改めて感じたのではないでしょうか。共通しているのは、依頼側に『自分はこの様に理解したが、これで良いか』という確認をするという基本動作が守られていないということです。

このコラムでは折に触れて基本リテラシとして紹介していますが、ここの登場人物は全員その発想と具体的なスキルがありません。ヒアリングして終わりではなく、ヒアリングして得た情報を整理し、ドキュメントにして、それを相手方に確認をもらうというクセをつけないと、紹介したようなことが起きてしまいます。業務は複雑なので、その仕様を正しく伝えるためには殊更必要なこと(クセ)です。

 

大手SIベンダでは、仕様書をワークシート化して漏れなく、正しく伝えようとしていますが、文字で誤解なく正しく表現するのは至難の業です。画面を見ながら仕事(操作)をする今、仕様を図で表現すると誤解が軽減されます。上述のブランコは、作り手に木にタイヤをぶら下げた絵を見せれば理解の齟齬なく希望が伝わったはずですが、これと同じです。私は画面中心設計という設計方法を提唱していて、過去国鉄民営化後のJRを皮切りに手ディスカウント会社、化粧品会社などでこの方法で仕様を決めてきましたが、理解の行き違いは格段に軽減されました。文字で表現しにくい箇所、文字で表現し切れていない機能、動きが視覚的に理解できるからです。もっとも、旧態依然とした設計手法から抜け出せず、思考回路が固定化してしまった大手SIベンダの頭の固いSEには理解が難しいようで、大手ベンダ孫会社のできの悪いSEには苦労しました。

 

医療機関に限らず現場では、業務の専門用語、省略語はもちろん、ソレ、アレが飛び交います。しかし、アレとかソレでは情報の正確な伝達を行うことはできません。自分のデフォルトや常識が、相手のデフォルト、常識になっていないことを十分理解して臨まなければなりません。知識、経験、基本的スキルが違っていると思ってヒアリングしなければならないし、ドキュメントを作り、プレゼンテーションし、誤解なく理解されていることの確認を取らなければならないでしょう。

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