自治体、小売業、製造業、サービス業、医療など、様々な業種の業務分析と改善改革、システム化のコンサルティングをしてきました。いずれも、市民、顧客、患者がいて商売が成り立つ業界業種ですが、三波春夫が言った『お客様は神様です』という言葉を真に受けたのか、客が横柄になってきた傾向があります。医療機関が、患者の呼称を患者さんから患者に変えたのは、クレーマ患者を増やすきっかけになったのかもしれません。スーパーに行くと、クレームが張り出されているので参考までに読みますが、どうかと思うクレームを平気で言ってくる文句をつけることに生きがいを感じているかのような、たちの悪いクレーマもいます。今はカスハラという言葉がありますが、過度なクレームは拒否すべきという風潮が出てきたのはまともな傾向だと思います。

 

三波春夫の『お客様は神様』とは、『お客は神だから大事にして媚び、何をされても我慢して尽くせ』ということではなく、『歌う時は、あたかも神前で祈るときのよう、雑念を払って澄み切った心にならなければ良い藝を見ることはできない』という心構えであり、決して客に言われるがままという意味ではありません。ここのところを勘違いし、お金を使ってやっている、品物を買ってやっている、利用してやっているという、情けない発想の皆さんが間違って解釈していることとは違います。

 

どうしてこのようなことを持ち出したか?それは、テレビで紹介されたディスカウントスーパーでスタッフがスタンディングチェアを使っている場面を見たからです。

常に立ちどうしな職種であると思われているレジなどのスタッフが、体重を分散させて腰や足への負荷を軽減できるこのスタンディングチェアは、客に申し訳ないし、クレームの素になるのではないかという気持ちを持つスタッフがいる反面、『いいじゃないか』と認めてくれる客もいます。工事の現場で交通整理をする場合には、このような持ち運び易いチェアを使っているケースを紹介していました。

これらのチェアは、離職率を下げる効果があるという調査結果が出ているそうですが、体への負担が少ないことがその要因の一つだとされています。つまり、ES(授業員満足度)を向上させることが、離職率向上に一役かっているいるということです。
 

『お客様は神様』を表面的に理解し、その様に振る舞うと、客の気分が良くなる(CS:顧客満足度向上)ことにつながることはあるでしょう。ツンツンしているスタッフよりも、ニコニコしているスタッフの方が気分よく買い物できるのは当然です。しかし、客に作り笑いではなく、自然に笑顔で対応するようになっていなければ長続きしません。それを『お客様は神様』という精神論で長続きさせようとしても無理です。ではどうすれば良いのでしょう。スタッフが気持ちよく働ける関係を作れば、肉体的精神的に余裕がでてきます。肉体的精神的ストレスを取り除けばES(授業員満足度)が向上します。上述の例はスタンディングチェアで肉体的な負荷を軽減していますが、作業の手順や内容を見直し、有形無形な負荷を軽減するとで、よりESが向上します。

私のクライアントであった年間16万人が来院し、内眼外眼合わせて年間8千件の手術をしていた病院では、押し寄せる患者から、『何時になるんだ!』、『もう3時間も待っている』、『後の予定が狂ってしまう』などというクレームがあり、スタッフはクレームを受けないよう、できるだけ患者と目を合わさないよう下を向いているという話を聞きました。当時、大声を出して順番を早くするよう要求するヤクザ系のクレーマ患者を目撃したことがありますが、彼女たちは大きなストレスを感じていたはずです。

 

そこで、待ち時間を生じているヵ所を洗い出して、待ちが生じる原因をピックアップし、その原因を解消するためにはどうすれば良いのかを、現場を交えて検討した結果を踏まえたリソースマネジメントシステムを作り、運用した結果・・・

という顕著な効果を生むことができました。しかも、当時小泉首相の診療報酬改定で受診抑制ともいえる策を講じた結果、全国医療機関が軒並み外来患者数が減少する中で、患者が増えたというおまけまでついてのことです。


クレームの件数は激減し、スタッフのストレスを下げることができましたが、待ち時間の減少には限界があります。そこで、患者が不満に思っていることは何かをスタッフが受けているクレームを調査しました。筆頭はいつ診てもらえる分からないということでした。救急患者が搬送されてきたなどの緊急事態がない限り、時間帯別予約枠の中で到着順に診察を受けられるという原則を元に診察待ち状況を各診察室の前に設置した大型ディスプレイに表示するようにしました。待ち情報以外に、患者さんに知っておいて欲しい病院の施策や、患者さんの役に立つ情報を流すなど、イライラせずに過してもらえるよう、一定時間毎に画面を切り替えて表示するようにしました。


精神論ではない具体的なこの様な施策を通して、患者はもちろん、スタッフのストレスを軽減させることに成功しました。CS向上を実現するには、具体的なESの向上が必要です。

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

※リブログを除き、本ブログ内容の無断転載、流用を禁じます。