新聞の投書欄に載っているものは、冗長なものや主張が不明確なもの、不適切なものは担当部がチェックしているのでまともですが、猫も杓子も投稿するSNSはそうではありません。FaceBookや旧ツイッタの中には、義務教育を履修して来たのかと思う稚拙なものも少なからずあります。そのレベルはともかく、社会人の中にもまともな文章が書けない人を散見することがあります。このブログでも、時々文章について書いてきましたが、配信されてきたセミナ案内の中にこんなものがあったので、今日はこれを取り上げます。

 

そして、受講を勧めるのはこんな人らしいです。

 

講師はライター歴の長い方だそうですが、19:30~21:00の1時間半の講義でこの効果が得られるなら、このセミナを受講すべきです。しかし、過去の経験から無理だと分かります。国税庁の税務大学校で全国の国税局から集まった研修生(国税調査官)に業務分析、ITの基礎を教えていた際、基本リテラシ®を教えていました。基本リテラシとは、ヒアリング、ドキュメンテーション(ライティング)、プレゼンテーション、ネゴシエーションで商標登録をした私の造語です。

40日の集中研修の間、毎日10minutes writingを課しました。10分間の時間を与え、文章を書いてもらい、これにコメントして返しました。最初は『今日は××について思うところを書いてください』とテーマを与えて書いてもらいましたが、途中から家族、趣味、世相、税金のことなど、何でもいいから10分間自由に書いてもらうことしました。最初から纏まり良く、上手な言い回しで書ける人もいましたが、総じて研修終了まじかになると分かりやすい文章を書けるようになってきました。元々然るべき仕事をしてきている皆さんなのでキチンと書けて当たり前ですが、お役所文書のような決まり切った形式と表現で過ごしてきた彼らには、書式自由で何を書いても良く、それも10分間で纏まった文章を書きあげるのは、結構大変だったようです。


で、どんなコメントをしたのかですが、言わんとしていることへの感想の他に、おかしいと思われるてにをは/接続詞/修飾語の位置/表現の適切性/文章の区切りなどについて指摘しました。国税局で一人前に仕事をしている研修生にとってはうるさい奴、偉そうな奴と思われたかもしれませんが、30年ぶりくらいに会った彼らの中には、自分の書いた10minutes writingと私の赤ペンでのコメントをファイルして持っている者もいましたが、いい思い出になっているとのことでした。文章力向上に、この10minutes writingは有効だと思った次第です。

 

10minutes writingとは、私の造語ではなく、富士山の麓にあった通産省と外務省の外郭団体であった貿易研修センタ(IIST)で3ヵ月受講した全寮制英語研修の際、外国人講師が何でもいいから10分間、英語で何かを書いてみよ!というものがあり、これをヒントにしたものです。

富士宮研修センター

案内がきた19:30~21:00の1時間半のライティング塾と毎日10minutes writingすることの違いが理解できたと思いますが、文章力向上のセミナ、講座は大なり小なりこんなものです。文章力を向上させるには時間がかかり、毎日の積み重ねが必要です。

 

改めて今回のセミナの案内を見ると
「SNSやブログに何を書けばいいかわからない...」
「文章を書くのが苦手...」
「自分の文章が読者に伝わっているか不安...」

という人向けとのこと。

そもそも、『何を書けばいいのか分からない』という人は、文章を書く前に解決しなければならない問題があります。何を書けばいいのかが分からなければ、どうやってうまく表現しようかに悩む必要はないし、うまく伝わっているかを心配することもありません。伝えたいことが決まっていないのだから当然で、何回受講しても変わりません

 

また、案内によればこのセミナを受講すると以下のことができるようになる・・・

✔️文章を書くのが苦手な方でも、自信を持って書けるようになります。
✔️SNSやブログでの効果的な文章の書き方がわかります。
✔️「書かない」文章づくりのポイントが理解できるようになります。

講師はどうやって教えるつもりなのか分かりませんが、19:30~21:00の1時間半のセミナでこれらを実現できると思わない方が無難、無理です。

文章力向上は、時間のかかるものと思いましょう。新聞、特に知識経験豊富な記者が担当する社説を読みましょう。また、示唆に富み、軽妙謝絶な表現が光る天声人語のような卓越した表現力を持つ記者の書いた記事を読み、参考にしましょう。それに日記をつけることを勧めます。少し大げさですが、ローマは一日にして成らずという言葉のとおりです。

 

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